自分の仕事に値段をつける
皆さん、おはようございます。
クリエイター問題の最たる例として、クリエイターが安請負をすることを何度か採り上げていますが、その問題の大部分が、不当な要求に毅然と立ち向かえないことがあります。クライアント優位の状況を作り出し、買い叩かれることもありますが、少し考えれば、その買い叩きがクリエイター専業とは縁遠い、単なるクリエイターからの搾取であることは目に見えてわかります。
クリエイターの身は、自分で守る。
今回は、自分の仕事に値段をつけることを語ろうと思います。
自分の仕事に値段をつける
クリエイターが仕事で食べていくには、自分の仕事に値段をつけなければなりません。
とはいえ、自分の仕事に値段をつけるというのは、決して簡単なことではありません。クライアントの大多数も、クリエイターの仕事にどれ位お金がかかるのかを知らないケースが多いのですが、クリエイターもどれぐらいの値段が適切なのか、それを知るのが難しいものです。
では、どうやって考えましょうか。
クリエイター専業で食べていくことを考える
会社員であれば、給料が入ったら、まず税金関連が引かれます。その後で、生活費を確保し、必要とあれば積立に回す…そしてどれだけ手元に残るかという計算をします。
それと同じで、まず、源泉をクリエイター業のみと考えます。
クリエイター業で自活できるようにするにはどれだけの稼ぎが必要になるのか、月にどれだけの仕事を請け負えるのか、それを考えると、1ヶ月の稼ぎを請け負える件数で割った値が、おおよその1件あたりの金額になるでしょう。もちろん、将来の積立や仕事ができない状況、仕事のための時間が減るなどの不測の事態に備え、余裕をもたせた計算は欠かせません。
クリエイター業は専業の方がいい、兼業クリエイターには問題があると過去記事で書いていたのは、兼業という他に収入がある状況が、クリエイター専業で食べていくためのシミュレーションをしにくく、自分の仕事に正しい値段をつけられない懸念があるためです。
バイトのほうが効率いいなら考えなおせ
一番現実的なのは、1件の報酬を仕事の時間で割った値が、理想とする時給に届いているか否かで判断することでしょう。楽曲1曲作るのに10時間かかるんだったら、3~4万円は手にしないと割に合いません。もちろん、クリエイター業には、制作の時間だけではなく、事務的なやり取りも仕事の時間に含まれます。
時給換算で1000円を下回るのであれば、設定金額を見直すべきでしょう。もちろん、同業者が同じようなものを作る場合と比べて圧倒的に時間がかかりすぎるというのであれば、作業時間を縮める方向に力を注がなければいけません。仕事を素早く、効率的に行うのもプロには必要です。
同業者に倣う
同業者のホームページを訪ねて調べるのもありでしょう。
激安で承ります!と、金銭的コストの安さを売りにする同業者であっても、平均と比べると安いですが、それなりに真っ当な値段提示しています。
但し、フリーランスと法人では、内部事情もあるため、同じものを作るにしてもその価格が大きく異なる場合があります。フリーで仕事を請け負うというのであれば、同じフリーランスの同業者を参考にした方がいいかもしれません。
これら3つのアプローチで考えると、大体世間の相場と似たような価格に落ち着くのではないでしょうか。
値段を上げる要因
同じ仕事をするにおいても、同業者と比べて値段に差があることは否めません。もちろん、個人の偏差もありますが、他と比べて、サービスの値段を吊り上げる要因はあります。
サービスの値段を吊り上げる要因は、以下のとおりです。
正確に言うと、以下の要因があるから値段を「吊り上げることが出来る」と言えましょう。同業者に倣って値段を決める場合でも、こういった要因があるかないかを把握しておかないと、理由がなく値段を高くするだけになります。
- 実績があり、名が知れている
- 制作環境の良さが伺える
- 外部とやり取りが出来る
- 即時対応が出来る
実績がある
いわゆるブランディングです。有名ボカロPがボカロオリジナルを上げれば、それだけで動画は再生されるし、マイリス数も弾みます。実績があるというのは、いわば良い仕事をきっちりこなすことの証明でもあり、クライアントからすれば、「実績のあるこの人が作った作品」というアピールポイントを付加する事にもなります。
制作環境の良さが伺える
同じ楽曲制作でも、レコーディング用の防音室を備えていたり、大きな卓(ミキシングコンソール)があるだけでも、設備にお金を掛けていることが伺え、それを利用した仕事ができます。こういう設備をアピールすることにより、多少金額を弾んでも問題はないでしょう。但し個人の場合、ハードウェア的な制作環境の良さをアピールするのは難しいので、企業向けの戦略と言えます。
外部とのやり取りが出来る
音楽の場合、自分でギターを弾いたり、ギタリストを呼んで生録したり、ストリングスも打ち込みではなくアンサンブルを収録して使うなど、一層質の高い制作ができる場合、値段を吊り上げることが可能です。
但し、外部に対してお金を払う必要が有るため、クライアントの予算が限られているケースにおいては敬遠される可能性もあります。
即時対応が出来る
相談したらすぐに返信できる体制が整っている、急な制作依頼にも応え、それに費やすだけの時間があるといった状況は、クライアントには誠実に映ります。クリエイターが専業であるメリットの1つと言えます。数日中に作ってという急な依頼だったら、特急料金を提示しても文句は言われないでしょう。
但し、即時対応できるということは、即時対応できる余裕が必要となるので、兼業では難しいのが現状です。
間違っても、自ら値段を下げてはならない
特に駆け出しのクリエイターや、アマチュア上がりに多いのですが、実績がないから、駆け出しでよくわからないからといった理由で安値を提示する事がありますが、これは全く効果がない上、同業者に迷惑をかけるだけなので止めましょう。
例えどんな状況であれ、クリエイターとして公言すれば1人のプロとして映ります。そんな中で、自信がない故に低価格を掲げれば、それを見たクライアントが「ああ、仕事を頼むのにはこれぐらいの予算があればいいのか」と、同業者にその値段を突きつける事案が横行します。
それに、低価格を見てやって来るクライアントは、低価格に惹かれてやってきただけです。お金を払うということは、仕事に責任を取らせるということでもあります。少し考えれば、制作を外部に依頼する、クライアントからしてみれば大切な仕事を遂行してもらうケースにおいて、責任が取れない人に仕事を頼めるでしょうか?真っ当な仕事をお願いする人は、低価格を見て警戒し、去っていくでしょう…つまり、低価格を見てやってくるクライアントは…もはや語るまでもありません。
もしも相手の買い叩きに応じれば、買い叩きに屈したクリエイターという烙印を押され、便利屋のように扱われ、当然ながらクリエイター収入では食べていけず、搾取されて廃業に至るだけです…クライアントに「クリエイターは買い叩ける」というメッセージを残して。
仕事に値段をつけられる人だけがプロになるべき
結論です。
プロというのは、その道で食べていく人のことを指します。どんなに技術があっても、それで食べていないのであればプロとは言えません。今日ではプロ=高い技術を持った人という意味で通っていることが多いですが、改めてプロという言葉の意味を知ってほしいと思います。
仕事に値段をつけられる人だけがプロになるべき、とは書きましたが、これもおかしな話です。プロとして食っていくのであれば、仕事に値段をつけられるのは当たり前なのですから。ゴミ拾いをしたら偉いと言われた、というエピソードのようなものです。
でもそれは、プロ意識の薄れということでもありますね。今は、知識や技術ばかりが偏重され、プロとしての心構えを持つ人が、クリエイターにもクライアントにも、少ない気がします。インターネットの住民から使えそうな人を引っ張りあげてくることが主流となっている今ならではの問題とも言えるでしょう。
改めて、プロとはなんたるか、それを考えていきたいと思います。