DTMのプロは何をすればいいのか
皆さん、おはようございます。
プロの演奏家は、空いた時間を楽器演奏に費やすと言われています。正確には、空いた時間以外でも、睡眠・食事・風呂トイレなどの生活必需以外は、時間を割いて演奏の習熟に充てているので、実質空き時間はない、とも言えるでしょう。
イラストレーターの場合、人物や小物、背景のデッサンをするなど、画力向上のための努力を惜しまないと思います。
ある日、音楽制作をする人は一体何をすればいいんだろう…という疑問が湧いてきました。演奏を主とするわけでもなく、演奏ができてもどちらかと言うと作曲をする、編曲をするという方が主流となるわけですが…
DTMの音楽制作に必要なものを考えてみる
プロのギタリストがギターの腕前を磨くのは、ギター演奏を商売道具とし、それを要求されるからですね。
では、DTMを舞台に音楽制作をするというと、何が要求されるのか。
商売道具:制作用の音楽機材、制作技術
要求されるもの:クライアントの欲する楽曲、本人の長所魅力
単純にリストアップするとこれですが、これを細分化していくと…
商売道具
- 機材を揃える(ハードウェア)
- 機材を揃える(ソフトウェア)
- 制作環境を整える
- 機材の扱い方を学ぶ(ハードウェア)
制作技術
- 音楽理論
- 和声学・オーケストレーション
- 楽器シミュレーション
- ジャンルごとの音楽知識
- DAWの扱い
- midiの扱い
- ソフトウェア音源の扱い
- 録音機材の扱い
- ミキシング技術
以上のことを考えると、ギタリストがギター演奏を売りとするに値するのは、DTMによって魅力ある楽曲を作り上げるということであると言えましょう。
なので、ギタリストがギターを弾いている時間が、上のような商売道具の整備や制作技術の向上に当たると思われます。
しかし…
「プロは」何をすればいいのか
アマチュアや同人活動で割り切るならともかく、プロとしてを考えるのであれば、さらなる要因が存在します。その要因とは…
プロとして生きる戦略の構築と実行
その道でメシを食いたいと思っているのであれば、自ずとやっていることだと思います。アーティストだって、アーティストとして飯を食うのであれば、練習をしてライブに出て、ファンを獲得してメジャーデビューする…という道のりが想起できます。
(その道程を往くための戦略が合ってる間違っているはともかくとして)
では、プロとして生きる戦略に必要なものとは一体何でしょうか…
企画
プロジェクトの立ち上げ、ライブやイベントへの参加
物販
楽曲集、作品集の制作・販売・管理
営業
営業周り・募集要項の確認・ポートフォリオ制作・営業道具の製作管理
事務
渉外・クライアントへの応対・メールへの返信など
経理
収支管理・確定申告
広報・広告
SNS上での広報、チラシやフライヤーによる広報、ホームページやブログ管理
マインドトレーニング
心構え、生活リズムの維持、自己啓発など
生存戦略
非常事態の対処
健康管理・ストレスコントロール
緊急事態の時に食いつなぐ方法
とんでもなく多いですね。
それもそのはずです。クリエイター業は事業主だ、と。やっていることは1企業がやっていること全部です。上に挙げたものの大部分を省略することができるのが、企業お抱えのクリエイターになる最大のメリットともいえますが。
仕事獲得のためのコネ作りも必要ですが、それ以上に必要なのは、最後に挙げた生存戦略だと思います。万が一作業ができなくなった時に別の方法で作業をすすめたり、バックアップからいち早く復旧できるようにすること、仕事や仕事以外の対人トラブルの対処やリスクマネージメント、仕事が来ない場合に収入を確保することといった非常線を張るのも大切ですが、特にその中でも、健康管理やストレスコントロールは極めて重要であると言えましょう。
身体が資本
たとえいい機材を持っていても、良い知識技術を持っていても、作品を生み出すのは人間です。体を壊してしまっては元も子もありませんし、身体にダメージを受ければパフォーマンスに大きく影響を与えます。
音楽制作の場合、体調不良は聴覚に影響を与えます。文字書きの場合、ストレスでミスタイプが増えるなど、作業速度を低下させます。もちろん、連日の睡眠不足や昼夜逆転の生活、エナジードリンク漬けが続けば、ある日眠りに就いたが最後、そのままヴァルハラ行きという結末を迎えることも少なくありません。
大抵その時は眠気も体力の減衰も感じないハイパーモードになっていることが多いわけですが…「身体が軽い、こんな気持で作業ができるなんて…もう何も怖くない!」だったりするので、無理ダメ、ゼッタイ!
若いうちにできることをしろとは言いますが、夭折はしなくていいです。
プロ意識が低いと、スパイラルに陥る
クリエイターや作家、アーティストだったら大多数が一度はハマると思われる負のスパイラル。単純に言うと「すべての失敗は自分の実力不足」という思い込みに飲まれてしまうことです。
ケーキ屋さんが美味しいケーキを作りました。しかし、店に客足は少なく、美味しいケーキは全く売れません。その結果を見て「ああ、このケーキじゃ味がまだまだなんだな…もっと美味しいケーキを作って認められれば繁盛するんだ!」と、不振に至った原因を自分の実力不足と決めつけてしまうことが度々起こります。果たしてそのケーキ屋さん、もっと美味しいケーキを作って繁盛したのでしょうか…
「いいものを作れば売れる」と思い込んでしまう典型例ですね。
実際、いいものを作っても、それを周知する力が弱ければ、誰も認知しません。クリエイターがハマる負のスパイラルはまさにこれで、特にストイックに活動をしている人ほどこの傾向が強いと思われます。
逆のパターンとして「アニメの聖地アピールや萌えキャラを生み出して地方の活性化!」というケースが失敗する理由は、営業力に物を言わせて誘導したところで観光地としての魅力がないなどお金を落とす要因が整ってないからです。特に「萌えキャラを生み出せば巡礼者が来る」という考えについては、そういう類が好きな人ほど見る目が厳しいので一昔前ほどのパワーはないでしょう。それに、萌えキャラを使って地域活性に乗ってくれる、理解してくれる事業者や組織がいなければ足並みは揃いません。
脱線してしまいましたが、実力を磨くだけではダメ、営業ばかりでその先が伴わないのもダメ、バランスよく高めていくのが必要だということですね。それを考えると、クリエイターが制作能力を磨くことに集中し、営業や販売はそれを得意とする人に託すというのは十分選択肢としてはありでしょう。ただ、営業や販売を投げるとしても、投げた相手に問題があるなどの懸念すべき要因はありますが。
結局どこに力を入れればいいのか
制作や運営で悩んだその都度、悩んだ要因を解決する方向に力を注げばいいんじゃないでしょうか、しか言えません。逆に、悩んでいたことを解決させることで、それが自信につながったり、新しい業務請負ができるようになったりなど、プラスの要因が増えると思います。
辛いのは、力を入れるべきところが多すぎるよりも、どこに力を入れるべきかわからなくなることではないでしょうか。
希望としては、営業や広報などの内政に力を入れなくても、仕事の方からやって来る、内政に費やすコストを制作に回せることだとは思いますが、同業者同士がひしめき埋もれがちになる今日のクリエイター事情では、なかなか難しい物があるでしょう。
クリエイター業って千手観音みたいなんですね。