なぜ機材リストを公表するのですか
皆さん、おはようございます。
音楽制作のクリエイターや企業のサイトを見ると、時々「制作に使用している機材」がリストアップされているページが見られます。その中には「うわっ、こんな機材あるん…ブルジョワじゃねぇか!」と思う機材も…
しかし、なぜ人は、自分たちの使用している機材を公表するのでしょうか。
ぶっちゃけ、意味が無い
例えば…
制作に使用している機材
- 総合音源:KOMPAKT11 EXTREME
- ピアノ音源:Sotobory2
- ベース音源:Orivian
- オーケストラ音源:NorthSouth Subarasy Orchestra Platinum Edition
- ストリングス音源:AUS Koara Strings 2
- シンセ音源:Omonisophia
同業者からすると「なにこれとんでもない機材だらけじゃん!」と思うかもしれませんが…果たして楽曲制作を依頼する人が見て「すごい!じゃあここに頼もう!」と思うでしょうか。
なぜなら、楽曲制作を依頼する人は、大体が音楽の素人です。
たとえ素晴らしい機材がラインナップされても、そのために莫大な予算を投じたにしても、その凄さを理解してはくれないでしょう。
音楽関係者が依頼するとしても、制作に使用している機材がどういう名前で、それがどんな音質で、どこが素晴らしいのかを理解して「じゃあここに決めた!」となる可能性は極めて低いと思います。それを理解できるのは同業者しかいません。つまり…
塩を送る行為になりうる
この機材がプロには必要なんだなという情報を安易に拡散してしまうことになりかねません。その危険性については、過去の記事で語っています。
仕事がほしいための示威行為なのでは
おそらくこれだと思います。
機材リストを挙げているのは、それだけ機材が揃っていることが自信になっているからです。特に、機材を揃えるためにどれだけのお金を擲ったか、投げ打つお金を稼ぐためにどれだけ下積みしたか…その苦労を誰よりもわかっているのも自分自身です。そして、リストアップされたその機材を揃えた理由は1つ、仕事を手に入れるためです。
機材リストのページに込められたメッセージ、それは…
自分には制作のための機材がある。
素晴らしい機材がある。
素晴らしい機材を揃えた!
機材のために莫大な財を擲った!
仕事のための覚悟がある!
素晴らしい作品を提供できる!!
だから、仕事をください!
に尽きると思います。
しかし、先に述べた通り、クライアントに機材のリストを見せたところで「?」という反応をされるし、無用に情報を拡散するだけで、特に意味は無いと思われます。
もちろん意味があるケースも有る
機材のリストアップによって、利用者が有益な情報を把握できる場合には有効です。
ただ、そういう場合は、機材強化による強い行為ではなく、利用者が利用しやすいようにというユーザビリティを追求する目的で情報が記載されているので、そもそも目的が異なります。
例えば、リハーサルスタジオ。
スタジオの広さ、マーシャルアンプの有無、スタジオ内の録音用機材…ギターアンプの種類についてはサウンドメイキングが現地でできるかどうかに関わってきますし、録音用機材については、「俺の音はこのマイクじゃないとダメだ!」というこだわりを持つ人も居るでしょう。機材のリストアップには、事前に利用者が利用を吟味する意味合いが含まれます。
結婚式場やイベント会場の場合、音響用機材がリストアップされています。
音響を担当するエンジニアが、リストアップされた機材の一覧を見れば、自分が得意とする機材を選んだり、それがなければ事前に使用する機材を予習することができます。当然、当日の現場でのパフォーマンスに関わってきます。
ただ、同人誌印刷を頼む際に「弊社で使用している印刷機はXX社の~~で、裁断機はOO社の~~を使ってます」とだけ堂々と書かれても、それが顧客にとってどんなメリットがあるのかがわかりません。「弊社で使用している印刷機はXX社の~~です。以前の印刷機と比べ、肌色が綺麗に印刷され、フルカラー印刷のクオリティが大幅にアップしました!」と書いてあれば、機材がアピールポイントとなり得ますが。
それと同じように、制作機材をズラズラと並べられても、「うわー、なんかわからないけどすっごい機材がいっぱいあるー!」の率直な感想以上の反応は期待できないと思います。
でも判るわその気持ち
人はどうしてもいいものを手に入れると公表したがる生き物なので、その気持ちは良くわかります。
ちなみに、似たような要因に「絶対音感持ってます」というケースも有り、これも機材リストの公表と同じルーチンで起こるものだと思われます。
高い機材を揃えればいいものができるは限りませんが、高い機材ほどクオリティの上限や下限が高く、作業効率がいい傾向は否定できません。
それを誇示するには作品で…が妥当ですかね。
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