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クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

クリエイターの仕事ってなんだろう?

皆さん、おはようございます。

 

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水曜日の夜に、こんな記事を見つけたので、気になったことを今回の話題にしようと思います。

 

本題

デザイナーに制作を依頼したら突然見積額の倍の料金を請求された

概要

デザイナーにはがきの片面を印刷する依頼を出し、見積もりを出してもらい合意、作業に至った。しかし、後に両面印刷にするなどの依頼を出したり、クライアント側で度々修正を要求するなどの二転三転をした結果、クリエイター側から最初の見積の倍の価格を提示された。それもあり、クライアントとクリエイターの間でトラブルが発生し、状況が行き着かなくなりクライアント側からキャンセルをかけるに至った。

クライアント側は、案件をキャンセルして本来手に入るはずの成果物が手に入らないのだから支払いには応じない、と言っている。

要点

  • クライアントはお金が厳しいので、2万円の報酬を提示した
  • 作業は依頼日の翌日までにやってくれと納期を指定
  • クリエイターもそれに応じた
  • 指示書などがなく、質問をしても答えが得られないまま期日を迎えた
  • 再三の仕様変更が行われ、追加料金を請求された
  • 期日までに納品がされなかったのでキャンセルしたが、作業料金を要求された
  • 仕事はした納品物がない以上支払いに応じないの一点張り
  • お金が厳しいから最初の見積もりで合意したのに追加料金はおかしい

結論

裁判に発展したらクライアント側が敗訴します

 

なぜこういう結論に至るのでしょうか。

そこを説明したいと思います。

そもそもクリエイターの仕事って何よ?

クリエイターの仕事は、製造業ではありません。

サービス業です。

作品を買ってもらうことではなく、作品を制作することが仕事です。だから、制作の仕事をする際に、成果物を購入してもらう=制作料金には絶対にならないはずです。

例えを出しましょう…

市販の音楽CDを購入する時、いくら払いますか?

…大体1000~3000円ですよね。

では、その音楽CDを制作するのに、いくら掛かると思いますか?

1000円~3000円ではまず無理と思いますよね?もちろん無理です。

クリエイターの仕事は、言わずもがな、その販売するものを作るところを担っているのです。出来合いのものを購入することとは違い、出来合いのものではないオーダーメイドのものを納品するのですから、現物の値段で制作できるわけがありません。しかし、残念ながら、ランサー系サイトなどでは、出来合いの作品の購入価格を制作費として提示してくる事案が少なくありません。5000円で楽曲制作ができるわけがありません

クリエイターに仕事を依頼するとは

クライアントの意に沿った作品を作らせて納品させる、ということになります。

ここで大事なのは、作らせるということです。

つまり、交渉成立してから作品を納品するまでの間に、作品を制作するという作業が発生するということです。

クリエイターの仕事とは

作品を納品するというそこに至るまでには、多くの作業があります。

仕様書を読む

クライアントから出された仕様書に目を通し、どういう作品を作るのか、どういう方向性にするのかを定義します。

プリンが食べたい相手に、餃子を出すわけにはいきません。

ラフスケッチ

デザインだったらラフ画、ホームページ制作なら設計図、音楽制作だったら作曲・編曲に当たる部分です。ここから肉付けしたりブラッシュアップしたり推敲したりして、完成形を目指します。

制作

フォトショップDAWなど、作業機上での制作に入ります。

ここでの作業は、どれだけ前の作業をしっかりと決めたかにかかってくるでしょう。

フィードバックなどの事務作業

ラフスケッチができた、色校、ラフミックスなど、制作途中の段階をクライアントに報告し、このまま作業をすすめるか、多少の修正を必要とするかを判断し、完成形を目指します。当然、フィードバックが遅れれば、作業が遅れることがあったり、クライアントの意に沿わないものが納品されることがあります。

用途に合わせた調整

イラストの納品と言っても、用途によって納品形態は異なります。

サイト用の素材であればピクセルサイズが決まってきますし、印刷用であれば印刷後の色の変化を先読みした配色をしなければなりません。

請求書・領収書などの書面の手配

個人事業者なので、しっかりとした書面で請求書や領収書の発行を行います。

 

ただパソコンにオタマジャクシを載せて音楽制作おしまい、とか、色を載せておしまいと思われがちなクリエイティブな仕事…その中身は、様々な工程が複雑に絡み合い、プロとしての経験や勘が制作ににじみ出た職人技そのものと言っていいでしょう。

 

nrts-creator.hateblo.jp

では改めてこの件の問題点を提起します

初期の見積もりと実際の請求額が違う

これについては追加料金を否定する理由にはなりません。なぜなら、初期の見積もりでは、100の仕事に対して2万円の金額で見積もりを出し合意したわけですが、途中で仕様が変わり仕様変更に振り回され、修正のための作業が発生した時点で、初期見積もりにはない作業の増加が発生したからです。当然、見積もり後に仕事が増加すれば金額はそれに従って上昇します。もちろん、増額の背景には再三に渡る仕様変更やトラブルへのペナルティもあったのかもしれませんが、それを抜いても増額の範疇は正当であるものと思われます。

案件をキャンセルしたのに支払わないといけないのか

先に挙げたように、クリエイター業はサービス業です。

再三に渡るトラブルの結果行き着かなくなりキャンセルに至ったとしても、その間にクリエイターが行った仕事と、クリエイターが行った仕事に対する拘束時間に対して、報酬を支払わなければなりません。作品制作をするという契約は、作品制作のための仕事をさせるという契約なのですから。

なので、作品の納品の是非が、支払いの是非に直結することはありません。ただ、キャンセル料金が報酬の10割に届く可能性は状況次第と言えるでしょう。

もし料金を踏み倒したらどうなるのか

裁判になるでしょう。

おそらく、クライアント側の勝訴になる可能性はゼロで、クライアントは追加料金の支払いを渋ったが故に、それを遥かに超える金額と、クライアントの属する組織の信頼を失うでしょう。

ちなみに、クリエイターは個人事業者なので、下請法第4条第1項第5号「買い叩きの禁止」、第2項第4号「不当な給付内容の変更及び不当なやり直し」に抵触する可能性が高いと思われます。また、本件が元で当該デザイナーに対する不利益が発生した場合、第1項第7号「報復措置の禁止」にも抵触するでしょう。

 

もちろん、クリエイター側に非がある場合は、追加作業が発生してもクリエイターがその責任を全うしなければなりません。クライアントが作って欲しいと指示 したものとは全く見当違いなものを作る、勝手に作業を増やして勝手に請求額を引き上げるなど、クリエイターとしての根幹を揺るがすことは、あってはなりま せん。

トラブルに巻き込まれないために

こういう事態に陥った時に理論武装して毅然と立ち向かえるのも必要ですが、何よりも、こういうクライアント間のトラブルが起こらないように普段から構えておくことが大切でしょう。

契約内容の確認

必ず、作業を進めている間に逐次確認できる形で契約を進めます。

口約束や電話上での契約は、契約内容をフィードバックできないのでやめたほうがいいでしょう。契約内容を自分で確認できないということは、相手も確認できないということになり、内容の相違がトラブルにつながりかねません。

仕様書を手元に置く

制作において指針となる存在はもちろん、こういう風に進めてくれというのを具現化したものなので、仕様書に沿ったとおりに制作したのに仕様書通りでないなどのトラブルに遭遇した時の対策になります。

見積もりが変わる場合は断りを入れる

どれだけの修正作業に応じるのか、どこまで見積もり金額の変動無しで追加作業に応じるのか、これを明確にする必要が有ります。そして、修正要求に対し、見積もりが変わるほどの作業の追加が発生する場合は、必ずクライアントに許可を求めます。

クライアントに許可を求めず作業を進めれば、トラブルの原因ともなりますし、見積もりが変わるほどの追加作業であっても無償でやると言ってしまえば、大きな拘束時間を要する作業も追加料金が必要ないとみなされ、後のトラブルに繋がったり、多方面での買い叩きを助長したりすることになりかねません。

自分の仕事に値段をつける

 

nrts-creator.hateblo.jp

 作品を制作し、納品に至るまでにどれぐらいのコストがかかるのかを把握しておけば、買い叩きに対して論理的に自衛することができるでしょう。また、作業が増えた際にどれぐらいの追加料金を定めるか、その設定も難なく行えます。

仕事をしないのも選択肢のうち

もちろん契約後に、ではありません。

作品の制作や納期について、どうしても自信がない、自信が持てないと思うのであれば、そういう仕事を請けないのもトラブル回避のひとつです。自信がない様子を嗅ぎ取られれば、そこに付け込まれて買い叩かれたり舐められたりと、いいことがありません。

また、明らかに買い叩きと思われる件については、関わらないほうがいいでしょう。明らかに買い叩きと思われる金額を提示するのは、その予算で作らせることが軸にあるからです。余程のことがない限り、まっとうな金額の提示は期待できません。

 

この件は釣りであって欲しい…そう願うほどにひどい案件ですが、クリエイター界隈では長時間拘束、低報酬の事案が横行しているのも事実です。

これらに対しては、クライアントへの理解の呼びかけもそうですが、何よりもクリエイター自身が加担しないことが大切です。誰もがクリエイターになれる時代だからこそ、毅然とした態度を持つ、プロたる心を持つことが、一層大切であることを、周知徹底しなければ、なりません。