クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

自分の仕事に価値を見出す

皆さん、おはようございます。

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クリエイター業というのは言ってみれば専門的な仕事をするわけであって、当然ながら制作に必要な専門的な知識や技術、それに伴う感性を持っているのですが…

よくよく考えると、人にはない専門的な知識技術って、人にはない以上簡単にできるわけがない事なので、仕事をする上で十分なお金をもらうに値する要因ではないでしょうか。にも関わらず、それを安売りしてしまうことが多いように見られます。結果として、専門的な知識を持つ人の価値、専門的な仕事に対する価値が安くとられ、クリエイターの買い叩きにつながっているのではないかと思う次第です。

 

自分の仕事に価値を見出す

とにかく、音楽制作の仕事請負ひとつとっても、1000円単位で楽曲制作しますという声が煩わしいくらい多いです。本業としているのであれば、そんな価格で請け負うなんて選択肢は絶対に出てきませんし、商業で通用する十分なクオリティを持つ人がそれぐらいで請け負っているのであれば、まっとうな値段を提示しても十分食っていけるでしょう。

また、クライアント側からしても、音楽制作にお金がかからないと思うような金額を提示されることは多く見られます。音楽制作にどれくらいコストがかかるのかわからないということも考えられますが、少なからず無償ないしトンデモな価格で請け負う人がいることが影響を及ぼしている可能性は否定できません。

専門的な仕事に対して安い値段を提示されてしまうということは、誰でもできる安い仕事であるという価値観を持たれていることと同じです。でも、音楽制作を始め、クリエイター業は本当に安い仕事と言えるのでしょうか。

専門的なスキルをレアと思わなくなる

高速道路を走っていると、最初のうちは早いなと思うことがありますが、徐々に目がそれに慣れてきて、ゆっくりと走っているような錯覚に陥ります。インターチェンジで降りようという時にスピードメーターを見たら70~80km/h出てたという経験をする方も多いでしょう。大してスピードは出ていないと思っていても、実際はかなりスピードが出ていたりするものです。

それと同じように、クリエイター業だけにとどまりませんが、専門的な仕事に従事していると、その仕事について当たり前なことが、さも社会から見て特異であると思わなくなることがあります。それもまた、自分の仕事に対する価値観を麻痺させ、自分の仕事は高くないと思わせる原因になっているとも思われます。

音楽制作は誰にでもできるのか?

曲を演奏したり作曲したりすることだけなら、特別な人じゃないとできないというわけではありません。ただ、商業レベルの楽曲をしかるべき方法で納品する、そこを音楽制作ができると判断すると、そのスキルを持った人物は大きく限定されます。

ここで、音楽制作の能力ごとにレベル分けをしてみようと思います。

レベル1:作曲・編曲ができる

条件:自分で音楽を作り、それを表現できる

単純にギター弾き語りでも問題はありませんし、アカペラで歌っても問題ありません。

ここまでのラインだったら何かしら音楽をやっている人であればできると思います。

レベル2:作曲・編曲したものを形に残す

条件:制作した楽曲を再現できる記録を残す

譜面にしたり、midi打ち込みをするなど、自分以外が記録されたものを使って楽曲を再現できる状況とします。作曲・編曲できるという要素の他、それを記録するというプロセスが加わります。

当然ながら、自分以外の第三者がそれを用いた場合、人によってその再現された形が異なります。

レベル3:DAW上で制作する

条件:制作した楽曲をDAW上でデータ化する

DAWを使って楽曲制作を行い、ある程度のミックスを施した上で、wav音源として書き出せる状況とします。DAW上での制作技術が入り、いよいよ本格的、専門的な分野に入ったといえるでしょう。DAWを扱うというのは、多少の楽曲制作のスキルが有ればできるとは思いますが、それでもレベル2と比べるとその数は大きく減ることでしょう。

これで一応は、wav音源、オーディオCDという、誰がどんな形で聞いても遜色ない形になります。

レベル4:市販の商業曲程度のマスタリングを施す

条件:市販の楽曲と同程度の仕上がりにする

レベル3の段階でも音源としては成立するのですが、言ってみれば「おかしい、ミックスしてノーマライズして音量を最大まで稼いだのに市販CDとくらべて音が細い…」という状態でしかありません。レベル3の音源制作能力に加え、市販の楽曲と同じぐらいの音圧調整ができる状況をレベル4とします。もちろん、ただ音圧を稼いだだけではなく、聴感を損なったり、音量がベコンベコン唸る不細工な仕上がりにならないことが前提条件です。

ここまで行けば、あとは実力と実績といった、専門的な知識技術が直接関係しない要因が残るだけになります。専門的な能力だけで見れば、プロレベルとみなしていいでしょう。

これらを踏まえると、プロになるというのはその分野において専門的になることなので、レベルが上がるほどその絶対数は大幅に減少していきます。

一般的に見れば、市販レベルの楽曲が作れる人なんてそう滅多にいません。なので、絶対的に見ればクリエイターの持つ専門的なスキルは、高く評価されてしかるべきです。

相対的価値観が安請負の原因に…?

ただ、クリエイターが仕事に価値観を見いだせない最大の理由は、相対的価値観にあると思います。クリエイターの持つスキルは絶対的に見れば高いです。しかし、本人から見た相対的なスキルは、高いと感じることがないケースが多いです。

  • 同業者との実力差に屈する
  • 仕事の絶対数が少ない
  • 仕事の取り合いに負ける

この3点が大きいと思われます。

クリエイター業を展開するにあたって、同業者とのつながりが増えます。その中には、華々しい功績を残す、いわば売れっ子も含まれます。しかし、売れっ子が華々しくその実績を積み上げている一方で、自分は絶対数の少ない仕事を同業者で取り合う泥水を啜るような事情があれば、そのギャップや焦り故に、自分はクリエイターとしての価値が低いと思ってしまうことも多いでしょう。

もちろん、仕事が来ない理由は実力だけがその要因とは限りませんが、実力を買ってくれるから仕事が来ると思いがちなクリエイター業においては、仕事が来ない=実力不足ということに縛られ、人と比べてスキルが低い、自分は専門的な価値が低いという思いにさいなまれることが多いでしょう。

結局のところ、自分のスキルの高さを見いだせなくなり、結果、仕事を得るために安請負に走るということに陥るのだと思います。

絶対的価値観でクリエイターを守る

しかし、クリエイターというのは専門的なスキルの塊、音楽を作るのもイラストを作るのも映像を作るのも、決して大多数が簡単にできることではありません。

自分はクリエイターとして人にはできない仕事ができる、こういうものを納めることができる、それを忘れずにアピールすることができれば、クリエイター業を優位に進めることにつながると思います。

それだけではありません。

クリエイターが自分の価値を見出し、仕事に然るべき値段を付けられるようになれば、買い叩きや安請負を締め出すことも可能です。クリエイターとして専門的な仕事ができることを自負すれば、まず安値を提示することはなくなりますし、極端に安値を提示するクリエイターが出てくれば、「この人は仕事を知らない、クリエイターとして価値がない」とクライアントに判断され、仕事を得ること無く退場していくでしょう。

 

クリエイターがクリエイターの世界を守る…

これが周知徹底されれば、クリエイターを生業にする人も増えていくでしょう。

 

クリエイターを、「食業」に。

 

nrts-creator.hateblo.jp