クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

高い報酬が当たり前になるといいことがある

皆さん、おはようございます。

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2017年は年頭から、クリエイター問題が世間を揺るがす展開となっています。

クリエイター問題は、クリエイター業を生業とする人だけの問題に留まりません。

なぜクリエイター業の闇が叩かれるのか

人間、対岸の火事については黙し語らぬものです。それは、対岸で由々しきことが起こっていても、自分の身に降りかかる脅威では無いからです。

同様に、サラリーマンからするとクリエイター業という自営業形態の問題は、固定給も定休日もない全く違った働き方をする業種で、そこで起こった事柄については、対岸の火事と言っても言い過ぎではないでしょう。

ではなぜ、そんな対岸の火事であるクリエイター問題に対して、クリエイターのみならず、会社員や学生など、垣根を超えて非難の声を上げるのでしょうか。

 

クリエイター業の闇は正社員の闇でもある

一番の理由はこれだと思います。

  • クライアント(雇用主)優位に進む現場
  • 一生懸命働いても手取りが少なく、バイトしていたほうがずっとマシな時給換算
  • 金を目的にするなら辞めちまえという心無い言葉

何を今更な気もしますが、クリエイター業の闇は、世間一般で言うブラック企業と同じです。場合によってはブラック企業よりも黒いかもしれません。特にクリエイター業については「趣味でやっているんだから」「好きでやってるんだろ」で仕事を低く見られることが多く、更に需要の絶対数が多いことから、買い叩きが横行し、屈してしまう事例も少なくありません。今ホットなソシャゲ業界では、クリエイターの募集は多い一方、予算が十分ではなくクリエイター買い叩きになるケースが消費者庁に採り上げられるまでになるほどです。

クリエイター業という、正社員からすると別の労働環境に対しても共感を得られるのは、そこにあるクリエイター業の闇が、正社員の身近にあるブラック企業足らしめる要因と共通しているからと思われます。

 

nrts-creator.hateblo.jp

クリエイター業の闇が共有される時代

良くも悪くも、誰もがクリエイターになる時代が到来しました。

ツイッター上でクリエイターを探し出すことは難しくなく、Pixiv経由で仕事をお願いされることも珍しくはありません。

ただその反面、明らかに「趣味で・好きでやっている」に付け込んだ買い叩きも横行しています。「アマチュアであれば買い叩けるだろう」「この人はプロを目指しているようだから、実績をちらつかせれば尻尾を振るだろう」「同人活動知名度が上がることを売りに買い叩こう」という雰囲気も見えます。あまつさえ、無償で応じたクリエイターリストが作られ、共有される悪循環もあるほどです。もちろん、買い叩く側は他に仕事を引き受ける人がいることをダシに、ウエメセ(上から目線)で要求したり、最悪罵詈雑言をもって負の感情を叩きつけるケースにも至ります。

こういう事例が、ツイッターなどで拡散することで、情報が共有されるようになり、絵や音楽を趣味で作っている程度の人にとっても、「クリエイターとして買い叩かれる危険性」が身近なものになったと感じる人が増えたことも挙げられます。

対岸の火事は、火の粉が飛んできて、いつ何時付け火されるかわからない、そんな危機意識を抱く人が増えました。

高い報酬が当たり前になる時代を目指せ

クリエイター問題を解決する方法、それは、まっとうな報酬が当たり前になることです。「楽曲1曲あたりこれぐらいもらえるといいな…」とクリエイターが提示する額面を手に出来ればいいのですが、それでも、下手に値段を上げればそれが元で依頼されなくなると思い、できる限り下げている…欲を言えばもう少し貰いたいと思う気持ちは強いと思います。

 では、高い報酬が当たり前になることには、どんなメリットがあるのでしょうか。

ここで言う「高い報酬」とは、クリエイター業を本業とするにあたって作業に対し十分な価格を指します。

クリエイターを本業とする人が増える

クリエイター業を本業とできない大きな理由は、本業で食べるだけの稼ぎがないからです。理由は様々ですが、仕事が手に入らない、仕事を手に入れても本業で食べるには十分な収入に到達しない事が挙げられます。そうなると、副業で続けるという、時間的制約の強い環境で展開しなければならず、いざという時の対処に時間が回せないなど、クリエイター業を本業としようにも限界が見えます。

高い報酬があれば、本業として食べていくために必要な請負数が少なくなります。そうすれば、本業とするために少ない仕事を奪い合うケースも緩和され、より多くのクリエイターが生き残ることができるようになるでしょう。仕事の奪い合いがなくなれば、クリエイター同士の連携も生まれ、切磋琢磨してクリエイター界隈のレベルアップにつながっていくことが期待されます。

クリエイター界隈のレベルが上がる

続きになりますが、高い報酬があれば、本業として食べていくために必要な請負数が少なくなり、結果、時間的精神的にも余裕ができます。余裕ができることで、制作環境もより良いものとなり、新しい技術の取得に充てられるなど、個々のクオリティアップにつながるでしょう。

また、多くのクリエイターが生き残るということは、それだけ世の中に多くの選択肢ができるということです。ギターが得意な演奏家1つとっても、その特性は十人十色、クリエイターの持つ個性が多く存在すればするほど、選ぶ側からしても特性に着目してこの人を選ぶ、という、コンテンツのクオリティをより一層深く掘り進めることができるようになるでしょう。

どんな業種も、大成するのは山の頂にいるほんの一握り…とはいえ、山が高ければ高いほど、裾野は広いものです。裾野を狭めた山は高くはならず、裾野を狭めればちょっとしたことで瓦解します。もちろん突き固めれば話は別ですが。

ウエメセで見られることが減る

クリエイター業を本業とする人が増えれば、クリエイター業全体のレベルが上がります。それは、プロという存在を一層強化することになります。

クリエイターが買い叩かれるのは、所詮趣味の延長…と思われる隙を作ることにあります。自分はプロであり、クリエイター業を本業としている、これで食っているんだ、と自負できるようになれば、クリエイター業など所詮趣味の延長…と思われて買い叩かれることも減るでしょう。

安い報酬を掲げるクリエイターが減る

十分な報酬が当たり前になれば、実績欲しさのために自らを安売りする、相場を逸脱した低価格を打ち出して仕事を呼び込む、という戦略が通用しなくなります。プロのクリエイターの仕事が高品質になれば、あからさまに安い価格を掲げるクリエイターに対して、安いから飛びつこうという考えの前に、安いには安いなりの理由がある…と警戒するようになるでしょう。

それに、安くてもいいから実績がほしい、よりも、実績が手に入って同時に十分な報酬も手に入る方がいいに決まってます。

クリエイター業という仕事があることを周知徹底できる

イラストを依頼すれば、高品質なイラストが手に入る。

音楽制作を依頼すれば、コンテンツを盛り上げる素晴らしい音楽が手に入る。

声優に声の仕事を依頼すれば、ただ喋るだけじゃないを実感できる。

プロがプロとして存在する理由、プロがプロたらしめる理由が周知されれば、もはや「所詮は趣味の延長」なんて言葉は封殺できるでしょう。

あなたは、任意の企業に対して「こういう仕事を低価格でお願いします」なんて堂々と言えますか?それができないのは、任意の企業が企業というプロフェッショナルたる威厳を持っているからでしょう。

クリエイター業に必要なのは、業界も、業界を構成する一人ひとりにも、プロフェッショナルたる威厳を持つことだと思います。

 

もちろん、制作現場に落ちる予算が少ない、というのもありますが、制作現場に落ちる予算が少ないことは絶対的な余裕が少ないとは限らず、「1点(激安価格)で作ります!」というのを単純に素材数倍したという見積もりで現場に落とす予算を決めている可能性も十分考えられます。

「趣味の延長でやっている」「好きでやっている」ひとは、たしかにいますが、クリエイターにお金を落とさなくなったら、その業種は滅びます。クリエイターを育てる土壌がないのですから。趣味の延長・好きでやっている人がいるのは、プロのクリエイターに感化され、憧れている人がいるから存在しているわけであり、プロが滅ぶのと同時に同じように姿を消すでしょう。そうなれば、その業種に関わる人、コンテンツを享受する人が大打撃を受けます。

そうなる前に、クリエイターがクリエイター業を営むプロであること、これを周知徹底し、悲しい取引がなくなるよう努力していかなければならないでしょう。

 

nrts-creator.hateblo.jp

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