クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

『クリエイターを、「食業」に。』の影の目的

皆さん、おはようございます。

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クリエイターがクリエイターとして生き、生業とし、自活できることを目指し意見を文章として紡いできた本ブログ、もう少しすると開設から2年になります。

これまで、フリーのクリエイターがネット上でどう展開するのかを吟味したり、今クリエイターが苛まれている問題を議論したりと、いろいろな話題を発信してきましたが、このブログの記事の中で、こっそりと主張されてきた物事があります。それは…

 

クリエイターを、「正社員」に。

どういうことですか?

 

…いや、だから言葉のとおりなんですよ。

 

今の時代は、インターネット上で個人単位で仕事の請負や営業などが完結できる時代になり、仕事をするために会社や事務所に所属する必要がなくなりました。むしろ会社員として雇用される椅子が少なくなったことを埋めるかのごとく、フリーランスとしての生き方はその市民権を徐々に拡充してきているようにも思えます。

それは時代の逆行なのか

そんな中で、「クリエイターは正社員として雇用されるべき」という声は、おそらく時代に逆行する意見なのかもしれません。言い方を変えれば、フリーランスとしてスタートする生き方が確立されつつある今に対して反旗を翻すことでもあります。

でも、敢えて今言いたい。

プロのクリエイターを1から育て上げ、未来の創作界隈の担い手を生み出す土壌を大切にして欲しいと。そのための土壌に最適なのは、企業がクリエイターを雇い、その生活を保証し、その中でプロのクリエイターとして、未来の担い手として育てていく環境であると…!

 

おしまい!

 

…終わっちゃダメだ。

クリエイターが企業に雇われて欲しい理由

クリエイターの生活が安定する

先にも挙げましたが、フリーのクリエイターが不安に思うことは、経済面。

収入が安定することは、安定した収入の数倍を稼ぐほどの安心感があります。例え、爆発的に月収入が上がっても、同じだけの収入が翌月も翌々月も続くとは限りません。余程のところまで行かない限り、仕事がなくなり収入が途絶する不安やリスクとは常に背中合わせです。

企業に勤めているとしてもそのリスクはゼロではありませんが、勤めている限り収入の安定性は保証されますし、悪い予感があっても的中するまでに十分な猶予を持てるでしょう。

営業や会計に縛られる必要がない

フリーのクリエイターは自営業。自営業は創作だけしていればいいというわけには行かず、社長と社員の二足の草鞋、仕事を取るための営業をし、営業のための作業をし、仕事をし、事務作業をし、そして会計をし、確定申告をしなくてはなりません。創作以外に割くリソースは決して低くはなく、そこに自分のリソースを持ってかれてしまうこともあるでしょう。

企業に勤めていれば、給料や会計に関することは基本経理がやってくれます。確かに企業に勤めているよりも、フリーのクリエイターのほうが青天井にはなりやすいでしょう。しかし、青天井と引き換えにのしかかる運営コストに割くリソースを考えると、安定した生活で得られる収入と天秤にかけた際に、必ずしもフリーランスでの働き方に傾くとは限りません。

何より、勤めている間は創作以外の要因に苛まれず、創作一本に集中できるので、クリエイターとして伸び伸びと仕事をできるかもしれません。

プロの現場に触れる機会がある

制作したものを商品として企業が成り立っている…当然ながら現場に培われたノウハウは計り知れません。

プロクオリティを生み出す技術、それを裏打ちするインフラ、プロが未来のプロに伝えるプロたる知識と心構え…これらは独学で鍛錬するよりも遥かに効率的に、品質の高いOJTであることは言うまでもありません。

何より、仕事をしている環境に自分があることが、プロとしての存在を育てることが大きいでしょう。

地理的要因、経済的要因を軽減する

クリエイターになりたい、その思いを阻害するもの…

その主因の1つが、地理的・経済的要因です。

地方に住んでいたが故に敬遠された、お金がなくて事業を興せない…様々な理由でクリエイター業を諦め、手放す人は少なくありません。同時に、数多のまだ見ぬ才能が、日の目を見ることなく投棄されていきます。もちろん、「フリーのクリエイターになりたい」という声に対し、身内から強い反発を受けた、それで諦めることもあるでしょう。

正社員としての起用があれば、地理的、経済的要因があっても、その敷居を大きく下げることはできます。十分な額面と安定した給与があれば、「クリエイターになりたい」という思いを阻害する論拠は、なくなるでしょう。

あぶれたクリエイターを減らしたい

最も言いたいのはこれです

本記事の冒頭で「今はインターネットで営業も仕事も完結でき、企業に所属する必要性がない時代」と書きました。もちろんフリーのクリエイターとしてネット上で活躍する人も少なくありません。

しかしそれは、企業という枷に囚われない生き方を選んだ、賢い生き方なのでしょうか。いいえ…

安定したクリエイター業という椅子取りゲームに競り負け、仕事にあぶれたから、フリーのクリエイターを選ばざるを得なかった、というケースが相当数あるように思えます。そうでなければ、サウンドクリエイターの正社員雇用に、40倍の倍率が付くわけがありません

結局の所、「クリ食。」を立ち上げた理由は、クリエイターがクリエイター業を生業として生きていけるようになってほしい、という願いからであり、フリーのクリエイター業を成り立たせるためのいろいろを記事にして発信してきたのは、フリーのクリエイターという生き方を「選ばざるを得なかった」人たちが持ち前のスキルで生きていけるようになってほしい、という想いからです。故に、フリーのクリエイターが企業のクリエイターに転職するということは何らおかしいことではありません。

企業に勤めていたクリエイターが退職し、フリーのクリエイターになっても、勤め時代のノウハウがあるから十分立ち回っていけますが、最初からフリーのクリエイターを選ばざるを得なくなった人はそうは行きません。クリエイターを目指すことを諦めようにも、フリーでクリエイターをやっていた時代はフリーター時代とみなされ軽視されがちで、クリエイター以外の生き方を選択しようにも「どうしてクリエイターとしてのスキルを選ばないの?」と冷たく言い放たれ、祈りを受ける結果になることも珍しくはありません。

 

…というわけで、「フリーのクリエイターがクリエイター業を生業とすることを目指す」ブログの影の目的を記事にしてみました。

…本当は1000文字ちょい、制作時間20分程度の記事になるはずが、いつの間にか3000文字程度のボリュームになってしまいました。

インターネットの利用で仕事を請け負うことができる時代、可能性が降ってきた時代とは言え、それでもなお、クリエイター事情は窮状そのものです。それはクリエイターを目指す人にとって、電子の世界に戦場を置き換えただけの熾烈な環境であることには変わりありません。今の時代がクリエイターに可能性をちらつかせることこそあれ、クリエイターを育てる土壌とは言い難いものでしょう。

だから、企業がクリエイターを擁し、プロのクリエイターを目指す人が安心して育つ環境を、拡充させていってほしい…そういう思いを共有すべく、この記事に仕上げました。

 

クリエイターが未来を創造できなくてどうすんの。

未来を創るのもクリエイターの仕事。

 

クリエイターを、「食業」に。