ビビンバを食べたい人にビビンバを出すべきか
皆さん、おはようございます。
ビビンバを注文したら、当然ビビンバが出てきますよね。
特に石焼ビビンバは、熱した器でできたおこげがアクセントとなり、焼肉や居酒屋では人気のメニューです。
しかし、ビビンバにかぎらず、外国の料理って、日本人の口に合わせてカスタマイズされているのがほとんどです。逆を言うと、日本で食べた外国の料理を、期待を胸に本場で食べると、あまりにもコレジャナイ感に苛まれてしまうこともあります。日本人の舌に合わせた味じゃないからです。
これは実は、クリエイター業でも同じことが言えます。
ビビンバなのか、ビビン丼なのか
ビビンバといえば、韓国の混ぜご飯ですね。で、対するビビン丼は、松屋が出しているビビンバ風の焼き丼メニューです。味付けは似ていますが、作り方や材料などは大きく違います。但し後者は、当たり前ですが日本人向けに味を作っています。
これと同じことが、音楽制作でも言えます。
音楽は、大きくジャンル分けされます。そして、楽曲制作を依頼される際にも、ジャンルを指定されることは少なくありません。ジャンルはいわば、クライアントからすれば「完成した楽曲のおおまかな形」の指定でもあります。
今回はその例えでビビンバを出していますが、クライアントがビビンバを作れといった際にビビンバを作って出したら、納得の行かない顔をされた、最悪残されたというケースも出てきます。それはなぜでしょうか。
そこで出てくるのが、ビビンバとビビン丼の違いです。
本場を売りにしたビビンバでは、味が合わないことが十分に考えられます。逆に、ビビン丼のようなそれっぽい味のほうがビビンバが食べたいというクライアントの想いに寄り添ったものになるケースも十分にあります。それを見抜けるかどうかも、クリエイターの手腕といったところでしょう。
音楽に当てはめると…
例えば…「おしゃれな店内で流すBGM用にジャズ曲を作って」と依頼されたとします。
前者は、テンションの効いたピアノとライドシンバルにペダルハイハットの裏が利いたドラムによる、なんとなくジャズっぽい曲。後者は、バリバリのジャズに触れ、唸るベースに荒ぶるピアノ、自由律なトランペットといった本格的なフリージャズ曲…
クライアントはどちらを選ぶかというと…当然前者です。
クライアントは確かにジャズ曲を依頼してきました。しかし、ジャズっぽい曲のほうが、本格的なジャズ曲を押しのけて選ばれるに至りました。ジャズ曲という定義では近いのは圧倒的に後者です。しかし前者が選ばれた理由…それは、クライアントが思い描くジャズのイメージに近かったのが、前者だからです。
本格的なジャズを畑とする人にとっては不愉快な出来事かもしれません。しかし、フリージャズ曲を集めてコンピレーションアルバムを作るならともかく、店内で流すBGMを作るというケースにおいては、大体のクライアントが音楽に関しては素人です。そこも考慮しないといけないでしょう。
特に音楽というのは、そのジャンルに本格的になればなるほど、ナンダコレハ感が強まっていく傾向は拭えません。
イラストに当てはめると
「ファンタジーRPGを題材としたコンピレーションを制作したいので、エルフ※の魔法使いを描いてください」※エルフ:森人ともいわれる異種族
この文章を読んで、おおまかに2つの絵が出てきました。(ブログ用に適当に描いています、画力はお察しください)
もはや議論するまでもないですが、採用されたのは左側です。右側については場合によっては怒られていたかもしれません。もちろん両方共「エルフの魔法使い」をテーマとしたものですが、クライアントの想定するエルフの姿に近かったのは、圧倒的前者でした。
なお、余談ですが、エルフ=耳が長く人間に酷似した姿というキャラクターイメージを確立したのは、ロードス島戦記らしいですね。
本格派を求めるのであれば…
もちろん本格的なものを作ってくれ、というのであれば、クライアントが本格的なものを知っていて、本格的なものがほしいという条件があるのですが…ただ、クライアントはその大多数が本格的ではなく、なんとなくそれっぽいものの方を求める気持ちが強い場合が多いです。もし本格的なものを求めるにしても、本格的はちょっと薄まるけど、薄まった分インパクトがプラスされたというケースであれば、競合した際に多少の差を十分凌駕することも考えられます。
目立たなくとも、きっちりクライアントに応える仕事をする…そんな楽曲制作者でありたいと思います。