VSLの「Solo Violin2」を衝動買いした話
皆さん、おはようございます。
ソロストリングス音源追求の旅は、果てしない。
幾つものソロストリングス音源が有り、幾つものソロストリングス音源が生まれ、様々な吟味を生み、ある者は喜び、またある者は落胆した…
そして2016年11月…ブラックフライデーでソフトウェア音源やプラグインが激安販売で盛り上がっているその裏で、その存在が確認される。
VIENNAが産んだソロバイオリン音源
V社については、もはや言うこともないオーケストラ音源のトップブランド。オーケストラに必要な楽器を網羅し、その中にはソロストリングス音源が存在している。ただ、オーケストラ寄りのソロストリングス音源であるため、個人的にはLASSのような、荒々しく化粧のされてない質感のあるストリングス音源がほしいと思っていた。しかしこの音源は非常に高い上、購入のためのプロセスが非常に面倒であった。あとは試奏してみて使い勝手も正直良くなかった…ポストLASSのストリングス音源を手に入れる…れが今日までのソロストリングス音源探訪の始まりでもあった。
しかし今回は、ソロストリングスの、バイオリン(とチェロ)の単体での販売となる。しかもこの情報を入手したときは、リリース直後で約5000円引きとあり、それは今年リリースされた様々なソロストリングス音源(バイオリン)と比べても大差ないものである。
というわけで…
購入してみた。
V社の出すオーケストラ音源について、簡単におさらいしてみます。
VIENNA Instruments
BRASS、Dimension Stringsなど、楽器カテゴリごとに収録されたパックである。
クリプトン(Sonicwire)経由で購入するとスタンダード版のみのライセンス購入になるが、それでもアーティキュレーションパッチ(収録された奏法のこと)は潤沢。
まともにオーケストラ楽器全部を揃えようとすると百万近く飛ぶ。
Special Edition
世間一般でVSLの音というとだいたいこれ。
前述したInstrumentsの各楽器から、頻出するアーティキュレーションを厳選したもの。なので、Special Editionのオーケストラストリングスと、Instrumentsのオーケストラストリングスの音素に違いはない。
ひとまずSpecial Edition1を手に入れればオーケストラ曲は作れるが、全4種のSpecial Editionと、追加アーティキュレーションを揃えると最低20万程度かかる。
Solo Instruments
Sonicwireサイトで見かける、黒い背景に楽器が鎮座しているパッケージ。
中身としては、Instruments収録楽器(金管・木管・パーカッション・鍵盤)を楽器ごとにバラ売りしたもの。(もちろんエクステンドも存在する)
今回購入したSolo Violin2は、この上記3つに当てはまらない存在と言えるでしょう。Solo Instumentsに近いのですが、エクステンドライブラリがありません。
※レジストレーションの際に「エクステンドライセンスコードがあったら入力して下さい」的なことを言われますが、存在しません。(ちなみにOpus2 Giga Studioでした・・・>要はSpecial Editionのご先祖様のようなもの)
で、音は?
聴いた感じ、Instrumentsのソロバイオリンの任意のアーティキュレーションと比較して、音質はあっさり乾いた感じで、同じベロシティ・同じエクスプレッションでは音量が小さいと感じる。これについてはSolo Violin2という、第2バイオリンを思わせるネーミングと、公式で「ソロストリングスとの二者択一」とか「ストリングスアンサンブルに混ぜる」と言っているので、それを見越して音質や音量を変えてある可能性は否めない。
オーケストラルな音とは若干離れた印象を覚える。VSEやInstrumentsのソロバイオリンは整っていてリバーブが乗りやすく、綺麗で上品なお嬢様のような音、Solo Violin2の音は、色気がありつつもどこかサッパリした妖艶な女性を思わせる官能的な音…という表現しかできない。(収録時の演奏者はおっさんとか言ってはいけない)
第2バイオリンとしての運用向けなのかなと思う一方、音量調整すれば第1バイオリンでも問題ないし、VSE(Special Edition)のソロストリングス音源と比べても、表現力は圧倒的に高い。ポップスで使用するのであれば、Solo Violin2の方に軍配が上がるだろう。
で、アーティキュレーションは?
サイトで見る限り、必要最低限のアーティキュレーションが揃っているなと思ったが、実際に使えるようにパッチを組んでみると…とにかく多い。
ショート&ロング
サステインにビブラートの有り無しが選べるところだけで、VSEよりも表現力が高い。また、殆どのアーティキュレーションで、開放弦での奏法を選べる。これは、バイオリンの開放弦の音、D3,A3,E4を弾いた時に、優先的に開放弦の音を使うかどうかを選択できる。開放弦は同じ音を下の弦で押さえて弾くときと比べ、指で抑えない分だけ響きが豊かになる。反面、ビブラートはかからない。
ダイナミクス
クレシェンド、ディミヌエンド、スフォルツァートなど、音量が大きく変動するショートノートのパッチ。ビブラート付きだけでもこの充実っぷり。
当然、ビブラートなしもある。
これについては、セルクロスフェードで、1Aにビブラートなし、1Bにビブラートありを設定して、セルクロスフェードをさせるためのコントローラをアサインすると便利でしょう。
レガート系
レガート・ポルタメントもビブラートの有り無しが選べる。
トリル
トリル奏法ではなく、トリル奏法に対応した都合のいい音素。
レガートでトリルを打ち込むときと比べ、アタック感があり、リアルタイム入力でも安定したトリルが作れる。
リピテーション(音素)
トレモロとは違う、主に16分音符で刻む奏法の音素。
リピテーション(奏法)
140~200bpmの16分音符で演奏する
但し、伸ばせば伸ばした分だけずっとリピテーションし続けるというわけではなく、何回か刻んでおしまい。ちょっとしたロングノートをリピテーションにする時にも便利。
というわけで組んでみた。
キースイッチは、C0~B0(※音源の表記は1オクターブ上で表記)の12個がX方向、キースイッチの入力ベロシティの強さでY方向に3段、計36個のパッチマトリクスで構成され、CC01(モジュレーションホイール)で、例えばレガートなら、レガート(ビブラートなし)←→レガート(ビブラート)と切り替えるようにしてあります。
- C0:スタッカート
- D0:デタシェ(素早く交互に運弓する奏法)
- D#0:ポルタメント
- E0:レガート(モノフォニック・ポリフォニック)
- F0:サステイン(CC01でビブラート切替可能)
- G0:トリル
- A0:リピテーション
- A#0:トレモロ(アタック・リリース設定が3種類)
- B0:ピチカート
主なアーティキュレーションなこんな感じ。
ダイナミクス系のパッチについては、使用頻度が低いため、黒鍵にアサインしてあります。これで結構プレイアブルな打ち込みができると思います。
強いて欠点を言うなれば
そのまま使うとVIENNA Instrumentsのプラグインリバーブ「MIRx」で専用設定を読み込めないことですね。ソロバイオリン音源をロードすると、リバーブはオーケストラのポジションに沿ったリバーブのデータを自動で読み込むのですが、Solo Violin2では第1バイオリン、第2バイオリンといった専用のポジションがなく、共通設定しかないので、工夫が必要です。
必要な工夫…
とはいえ、ヴァイオリンコンチェルトなど、オーケストラに混ぜる場合は共通設定でも十分ですし、ポップな楽曲で使うのであれば、DAWバンドルのリバーブを使っても問題はないでしょう。
また、記事作成段階では、チェロは発売されていますが、ビオラ、コントラバスが発売されていないので、ソロストリングス部隊を組むにはもう少し時間がかかりそうです。
仮に全部のソロストリングス音源が発売されたとしても、Instrumentsのソロストリングスと比べて、コル・レーニョやハーモニクス、バルトークピチカートなど他のソロストリングス音源には収録されている特殊奏法がないなど、コスパがいい廉価版という感じはあります(VSEのように追加アーティキュレーションパッチが出る可能性は否定できないが)。全部揃えても、Instrumentsのソロストリングスを購入する必要がないと断言するのは、難しいかもしれません。むしろ、だからこそ欲しくなる、という可能性もあるでしょう。
総合評価
コスパのいい優秀なソロストリングス音源☆☆☆☆☆
パッチの設定を工夫すればポップスでも十分使えるので、今後の制作に活かしていければと思います。