クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

大阪市が批判に晒されている理由

皆さん、おはようございます。

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新春早々、こんな記事が飛び込んでまいりました。

 

news.nifty.com

 

 事業者に無償で仕事をさせる事案

大阪市が、小学校のプログラミングの授業について、1年間の間、教育における報酬は無償で、教育にかかる諸経費も事業者負担という条件で担当事業者を公募。

当然ながらネット上では批判が吹き上がり、大阪市に対しては避難や抗議が殺到しているということですが、由々しいのは公募してしばらく、市に対して非難が殺到したことを受け、「こんなに非難轟々になるとは思わなかった」という発言があったことだ。

「非難轟々になるとは思わなかった」

この発言からはこう読み取れる。

  • 無償で引き受けてくれるものだと思ってた
  • 市が発注したのだから無償で請け負って当然
  • どれ位費用がかかるかわからないのでとりあえず無償にしてみた

もちろん、これはあくまでも発言から察した物事であり、市の担当者がそのように考えているかどうか確証はない。ただ、謝罪がなくそう読み取れるところから、さらなる炎上は必至と思われる。

無償で請けてはいけない理由

 

nrts-creator.hateblo.jp

これについては過去記事で挙げたとおりですが、今回の事案を踏まえて改めて説明すると、無償で請けたことで発生する実績とは「無償で仕事を請け負った記録」であり、当然、この実績を踏まえてやってくるクライアントは、無償で請けてくれることが魅力であるので、次回以降仕事の交渉をする時、明らかに圧倒的不利な状況からのスタートとなるのは目に見えています。そのくせ、仕事に対する責任についてはいっちょ前に求められる…それを踏まえてもなお、無償請負することにメリットがあるのでしょうか

 なぜネット世論は無償請負に反発するのか

答えは簡単です。

無償で請け負えというのは、正社員からすると無償労働しろと言うようなものです。特に近年、SNSツイッターの普及により様々な情報取得・共有が容易になり、そこにブラック企業問題に端を発する無償労働に対する批判の風潮が高まっていることもあり、ネット界隈が一丸となって理不尽に対して非難の声を上げる動きは強まっています。

また、Pixiv上での絵師買い叩きなど、同様ないし似たような事案が横行しているケースがいくつもピックアップされ、拡散され、情報共有ができるようになったことで、無償請負案件に対する脅威を共有できていることもあるでしょう。特に今回は、地方自治体が…大阪市という日本でも有数の大きな地方自治体が無償案件を依頼することが、クリエイターや事業者に無償で仕事を請け負わせる前例となり、堤の穴になる懸念も大きかったでしょう。

 

nrts-creator.hateblo.jp

 

もしも今回の公募が、ネット上ではなく事業者に対して電話などで交渉していたら、おそらくここまで炎上することはなかったでしょう。

似たような事例は2013年にも…

 

nlab.itmedia.co.jp

 大阪市天王寺区が無償でデザイナーを募集した件ですが、これについても批判が殺到、お詫び分を掲載して謝罪するにまで至った。だが気になるのは、その謝罪文の中で出てきたプロボノという存在だ。

プロボノとは何か

プロボノ

プロボノ(Pro bono)は、各分野の専門家が、職業上持っている知識・スキルや経験を活かして社会貢献するボランティア活動全般。また、それに参加する専門家自身

(wikipediaより引用)

良く言えばボランティアで社会に貢献する活動、悪く言えば専門職のバーゲンセール。

つまり、今回の大阪市のプログラミング担当事業者募集を無償で行ったことも「プロボノ募集」という意味合いで公募を掛けたと考えると辻褄があう。

ただ、プロボノ募集と打ったとしても、業務としての負担、それも1年にも及ぶ長きをプロボノとさせることには、やはり批判殺到は避けられないだろう。その背景にあるのは、やはり「大阪市という大きな地方自治体が事業者に無償労働を強いる前例を作る」ことが脅威になるからと思われる。

 「宣伝費」と考えてはいけない

今回の事案に限らず、「宣伝するから」「今後の仕事のための実績になるから」ということで請け負ってはいけないでしょう。前述したとおり、無償で請け負った結果、宣伝されるのは、実績になるのは「無償で請け負った公的な記録」だから、無償を目的としたクライアントに絡まれ、事業者として行き着かなくなり、廃業に追い込まれるのが見えています。

 

無償請負問題…

その背景には様々な要因がありますが、クリエイターを食業とするのであれば、クリエイターで食べるためにはどうすべきか…それを考えた上で、クリエイターも理論武装をする必要性を、改めて説いていきたいと思います。

 

 クリエイターは個人事業者なのですから。