皆さん、おはようございます。
この記事を書いている時点で、芸人による作品の無料公開を「金の奴隷解放宣言」と称し、クリエイターの有償請負批判が話題となり炎上の様相を呈しているようですが…
そのたびに出てくるのが、クリエイターの無償請負問題。決まって出てくるのが、「無償でお願いします」「無償で請け負います」と言ったこと。
近年、クリエイターの無償依頼・買い叩きについては、クリエイター界隈のみならず、関係のない人からしても問題だという提起がされるようになりましたが、それでも相変わらず、常軌を逸した報酬の提示、相場を逸した額面での請負といった、由々しき問題は現在進行形で発生しています。
なぜ制作は無料にならないのか
必ず聞かれるのは、この言葉です。
「絵や音楽や動画が無料で見られるんだから、無料で作って当たり前」
「作品を無料で公開して使わせているのに、どうして作るというと有料になるの?」
よくよく考えるとおかしな話ですが、絵や音楽や動画などのコンテンツやサービスについて、無料で手に入るのが当たり前と考える人は決して少なくはなく、転じて「そういうコンテンツを作ることは無料」と考える人もいます。
なぜ作品は無料で公開できるのか
ネット上でコンテンツを公開できる今だからこそ発生した概念と言えるでしょう。
同じ絵や音楽でも、インターネットがなかった時代はCDや印刷物など、物理媒体での提供となります。当然ながら、不特定多数に配布するのであれば、比例して材料費や制作費がかさんできます。宣伝目的で無料で配布するにしても、限度があるでしょう。
しかし、インターネット上で配信するのであれば、いくらでも複製ができるし、不特定多数がダウンロードしても、比例して費用がかかることはありません。顧客一人に配信するための材料費が0円です。
では無料公開というのは、本当に見返りを求めないコンテンツと言えるでしょうか。
無料で作品を公開する理由
プロであれアマチュアであれ、作品を無料で公開することには理由が有ります。
プロであれば、ビジネス的な側面…作品を通じて自分が何者なのかをプロモーションする、他の作品や有料コンテンツに誘導するための布石にする…アマチュアであれば、同じように作品を公開している人とつながりたいというコミュニケーションの一環として作品を公開する…理由は違えど、自分の目的を達成するために無料で作品公開をするに至っていることは変わりありません。
スーパーで試食をやっているから、その試食させている商品は0円なんですか?
では、なんで制作は無料にできないんですか?
答えから言うと、コンテンツは「作品」、制作は「作業」だからです。
無料コンテンツをダウンロードしても、すでに制作したものであるため、制作者の負担は一切増えません。(制作者に無料でコンテンツを使わせてくれ、とメールで問い合わせされるなどの事務作業を要するケースを除く)しかし、作ってくれという場合は、制作をするという作業が発生します。制作という作業が発生するということは、クライアントの求める作品を作るために、考案し、制作し、納品することに時間や労力を費やす事になります。これを一言で言うと「仕事」です。
つまり、無償でコンテンツを制作させるというのは「タダ働きしろ」と言うようなものです。ボランティアは自発的に行うものですが、無償での依頼は「ボランティアの強要」なのでおかしな話です。クリエイターじゃない人でさえも、昨今のクリエイターの無償請負に反対する理由は、それを自分の立場に落とし込み、タダ働きする・割の合わない仕事を強要されると理解したことによるものと言えるでしょう。
無料・激安には理由がある
楽曲制作は1曲数千円でできるわけがありません。
仮に、1曲5000円で、1日に2曲(楽曲にもよるがプロでもギリギリのペース)作れるとして、週5日4週間で換算すると月20万円です。この額面だけを見ると生活を確立するには十分と思われるかもしれませんが、生活するにもかなりギリギリの金額で余剰がなく、ある時体調を崩したり機材が破損したりといったアクシデントに見舞われれば挽回のしようもなくそれっきりです。それ以前に、毎日2曲作る必要がある請負状況自体が理論値であり、実際は仕事の奪い合いになるので画餅です。
それでもなお、それだけの金額を打ち出せるというのであれば、それは制作を本業としていない、別の安定した収入を確立している人か、生活に困らない環境にある人といえるでしょう。どちらにせよ、プロとしてクリエイター業に臨んでいるとはいえません。
近年、クリエイターに対する不遇な扱いが問題視されることが多くなり、それは世の中を動かそうというパワーになっている、そう感じます。
クリエイターがクリエイター業を「食業」とするためには、クリエイターが毅然と買い叩きに屈しないことも大切ですが、クリエイターという仕事が専門的な技術職であり、決して好きの延長線上でやっている安い仕事ではないことをはっきりとし、クリエイターという1職業である認識を確立しなければなりません。
そのためにも、この記事を見ている皆様には、いまクリエイターが貧している窮状と、それを是正しようという動きがあることを理解してほしいと、願うばかりです。
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