コンサートホールの写真はなぜピアノがポツンなのか
皆さん、おはようございます。
題名のない音楽会を見ていて、そういえば今年はトラベリング・オーガストの当たり年だ…と勝手に思っていましたが、コンサートホールはどれぐらいあるのだろう、と思って調べてみたところ、面白いことに気づきました。
冒頭の写真にも有りますが、とにかく音楽ホールの施設写真に写っている舞台の様子は舞台のど真ん中にピアノがポツンであることが多いです。
なぜ足並み揃えてピアノがポツンなのか、オーケストラ演奏の様子ではいけないのだろうか…そこについて考えてみようと思います。
公式ページの紹介写真でピアノがポツンな場所
洗足学園音楽大学 前田ホール(神奈川県)
http://www.senzoku.ac.jp/music/introduction/campus/maedahall.phpwww.senzoku.ac.jp
横浜みなとみらいホール(神奈川県)
文京シビックホール(東京都文京区)
http://bunkyocivichall.jp/guide_indexbunkyocivichall.jp
東京オペラシティ タケミツメモリアル
ちなみに、ミューザ川崎シンフォニーホールやサントリーホールについては、舞台の真ん中にピアノがポツンに加えて、オーケストラ奏者の椅子が取り囲んでいる写真となっています。
なぜピアノがポツンの構図になるのか
単純に考えると以下の要因に収束すると思います。
- 撮影コストがかからない上、コンサート会場だとわかる
- 撮影のためにオーケストラ楽団を招聘できない
- 演奏中の写真を使えない
- 特定の楽団を使うことによる不利益の懸念
撮影コストがかからない上、コンサート会場だとわかる
単純にピアノをど真ん中に置けば完成ですから。
ピアノについては、オーケストラコンサートが催される会場にプリインストールされてないなんてことはまずありません。あんな重たいものわざわざ搬入なんてできませんし。
それに、ドラマやアニメで「コンサート」というと、大体がピアノコンサートになるケースが多く、コンサートと言ったらピアノコンサート、というパブリックイメージも強いのではないでしょうか。もちろん、バイオリニストによるバイオリンコンツェルトというケースも有りますが、バイオリンは出演時に持ち込むのでステージ上の床にバイオリンがポツンと置いてあるのは違和感しかありません。
撮影のためにオーケストラ楽団を招聘できない
オーケストラコンサートの会場である、というプロモーションのために、楽団を楽器を持たせて招聘するのでは、それだけでとんでもなく高い写真になってしまいます。なにせ、大編成のオーケストラであれば80人ぐらい動員するわけですし、演奏してナンボの楽団員が写真撮影のためだけに出向するのも不本意でしょう。
演奏中の写真を使えない
それでは実際にイベントで演奏している写真を使えばいいか、というと、それもできないと思います。
個人の肖像権が、顔出しはNG…というのはそこまでないと思いますが、イベントのワンシーンとして撮影した写真は、イベントの様子としてブログなどで掲載するならまだしも、コンサートホールの紹介という形での使用は明らかに営利目的の利用となりえます。
特に、有名な楽団であれば、撮影した写真を営利目的で使用する場合、とんでもないコストがかかってくることもあるでしょう。営利目的での使用に高い金額を払わせて許諾するということは、写真を使う側に正当な、常軌を逸しない使用を求めるということでもあります。
特定の楽団を使うことによる不利益の懸念
コンサートホールでは、様々な楽団が登壇し、コンサートが催されます。もちろん、コンサートが催されれば、会場側に使用量が支払われます。
もしも、特定の楽団を使ってホームページ掲載用の写真を使った場合、それ以外の楽団が「なんでうちの楽団を写真に使わないんだ」と訴え出てくる可能性も考えられます。それによりそのコンサートホールへの出演を見送ることになれば、その分だけイベント会場の手取りが減ることになります。もちろん、他の楽団も平等にホームページの写真に使えば解決できるかもしれませんが、それはつまり、他の楽団も招聘して写真を撮って、使用量を支払う…という面倒なことに陥りかねません。
コンサートホールに十分な資金が回らなければ、閉鎖はやむなし、その悪影響が楽団などへとトップダウンしてくることになれば、文化の維持に関わります。
一つの写真について考えるというのも、なかなか面白いものです。
ただ、数年前に市音(大阪市音楽団)の補助金打ち切りが問題となり、「金のために文化を切り捨てるのか!」という声があがったことは記憶に新しく、コンサート関係者の窮状については、考える余地がまだいっぱい残っていることでしょう。
一番いいのは、こういったコンサートに足を運び、音楽のひとときを楽しむことですね。そのためには、コンサートを楽しめる心持ちと、コンサートを楽しみたい人を喜んで迎え入れる環境づくりが大切だと思います。