クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

「いらすとや」が企業を侵食する理由

皆さん、おはようございます。

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引っ越しして1週間…

ポストの中を確認すると…

 

市の発行した広報紙に、いらすとやの素材が使われていることを目にした。

今更ですが「いらすとや」とは

このブログでも頻繁に使っています。無料イラスト素材を大量に扱っているサイトで、特にといってアカウントを作る必要もなく、完全無料でも使用制限がありません。

そして、使ったことがある人にとっては、見ればわかる独自の絵柄

そして、使ったことがある人にとって、どれだけここのイラスト素材が使われているか、その氾濫っぷりを目の当たりにしていることでしょう。

 

ではなぜ、今日、ここまで「いらすとや」のイラスト素材が氾濫するまでに至ったのか…それを考えてみたいと思います。

 

いらすとやが氾濫するに至った理由

イラスト素材を用意する手間

PCが普及するまでは、ワープロを使って制作する以外に、手書きの原稿を印刷すると言った、手間がかかる上、決して見た目キレイとはいい難いものでした。

PCが普及し、ワードやエクセルを使ったDTP(Desk Top Picture)が主流となっても、独自でイラストを用いるというのは決して簡単なことではありませんでした。イラストをスキャンする必要があり、スキャンする技術と機材の準備、それをDTPで使えるように加工編集する技術は、一般からすると決して敷居が低いものではありません。

いらすとやが台頭する前は、あからさまにワードで加工しました感の強い誇張した文字をふんだんに使った手作りの広告が溢れていました。いらすとやがない時代は、ワードで誇張した表現がその代わりを担っていたと言ってもいいでしょう。

そして、いらすとやというフリー素材を扱うサイトが出るやいなや…イラスト素材を用意する手間はあっという間になくなり、ちょっとしたところでイラストを使おうと思った時にアクセスするようになりました。

情報は文字だけでも伝えることはできます。しかし、イラストを交えることで、文字だらけの堅苦しさや威圧感から解放され、より一層読みやすくなるでしょう。

フリー素材の強み

フリー素材の強みは、無料である…素材を用意することにお金がかからないというのは大きいでしょう。しかし、それはあくまでも、制作に十分な時間を確保できる場合に有利であるといえます。

しかし、企業や役所などが、掲示物や配布物を作るというケースにおいて、果たして十分な時間があるでしょうか?おそらく、普段行っている事務的な作業と平行して作れと言われることが多いでしょう。

「事務所前に掲示する告知の文面、今日中に仕上げておいて。イラストとかがあると助かるな」

こういう事例に対し、果たしてイラストを作ってと外部に頼むだけの余裕があるでしょうか。どんなに金を積んでも、クリエイターに作ってもらうだけの余裕はなく、おそらく探すだけでタイムアップとなるでしょう。

そうなると、「いま使いたいイラストがどこにあるのか」それを主軸に行動することになります。もし自分でイラストが描けて、導入できるのであれば、ペインタ系ソフトを開くか、紙に鉛筆を走らせて描き上げたものをスキャンするかですが、それに適う設備が勤務先にあるでしょうか。

そうなると、汎用性の高いイラストを扱い、なおかつ手軽に、即座に使うことができるシステムは非常に有利であるといえます。

そして、それを備えているのが、いらすとやです。

フリー素材の強みは、無料ではありません。

使いたい時にすぐ使える、有償無償問わずクリエイターへの依頼にはない即時応答性こそがフリー素材の強みです。このブログだって「記事トップの素材がないな…」と思ったら、写真ACかいらすとやのどちらかを開いて持ってきています。

いらすとや商法の弱み

しかし、そんないらすとやにも、仕事を請け負うにおいては弱みがあります。

冒頭でも書きましたが、誰が見ても「いらすとや」だとわかる絵柄であることです。

いらすとやという、無料イラスト素材を扱う存在が世に知れ渡った以上、いらすとやの絵柄=無料素材というイメージも広がりました。知名度を上げるためであればこの戦略は成功したと言えるでしょうが、果たして「いらすとやに有償で指定に沿ったイラスト素材を作ってもらう」気持ちになるでしょうか。それを商品や重要書類に使おうと思えるでしょうか。おそらく、有償で作ってもらったにせよ「無料素材だと思われる」の一心で、使うことをためらうでしょう。

※一応有償で制作を依頼することもできます。

無料で素材を提供し続けていると、それによって広まるのは、無料で素材を提供する存在という印象だけです。無料で素材を提供する人は、どれだけ彼の作った作品が世に使われる実績を得たとしても、無料の素材しか生み出す価値がない人としか見做されません。

そして、無料で作品をばらまいて知名度を上げようという、いらすとや商法を使おうというクリエイターが増えれば、本人が買い叩きの連鎖に悩まされるだけでなく「この業種は無料で素材を作るのが当たり前なんだな」という印象を無用に与え、結果、クリエイターの買い叩きを助長することにつながりかねません。

いらすとやについては、最初から素材を無料で作ることをコンセプトにしているので、作品を作って生業とする、「食業」とはまた違った存在です。

 

クリエイターとして、作品作りを生業とするのであれば、仕事をすることで十分食っていけることを考えなければなりません。給料をもらわないサラリーマンなんかいません。

そしてそれが、クリエイターを志す人の常識になれば、クリエイターを「食業」にする人も増えていくことでしょう。

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