なぜクリエイターは買い叩かれるのか
皆さん、おはようございます。
クリエイターの仕事が買い叩かれる、というのは、クリエイターがさらされている不遇の1つ。その要因は様々ですが、今回は買い叩かれる要因の1つについて掘り進めていこうと思います。
なぜクリエイターは買い叩かれるのか
単刀直入に言うと、クリエイターの仕事は安いと思われている、これが大きな要因ではないかと思います。
クリエイターの仕事がどれぐらいの値段がかかるのか、それを知らないから安請負や買い叩きが横行するというのであれば、まず値段を提示する前に値段がいくらかを尋ねるでしょう。もちろん、値段を知らないからこれぐらいだろうか、と想像で提示された金額が安請負の額面であるというケースもありますが、大概そういう場合は依頼の際に注釈がついていたりしますし、何より買い叩く意識がないそれなりの金額を提示されることがほとんどです。
しかし、ランサーサイトなどを見ていると、明らかに買い叩きと思われる値段の提示しかされないものがほとんどです。作詞作曲譜面制作もして報酬が5000円なんて、どこぞのブラック企業も裸足で逃げ出します。しかも「midiファイルも用意してください」って…容量が軽い音源ファイルの代名詞mp3ファイルでさえ、その千倍近くあるご時世でmidiを要求してくることを考えると、安く買い叩いたものを仕事で使う気満々です。
もちろん、そういう案件に実績欲しさで乗じるクリエイターもまた助長の一端を担っているのですが…クリエイターという専門職の仕事であるにも関わらず、安く見られることについては、クリエイター自身が自らを安売りし、自らの仕事を安いと流布する以外にも、新たな説が浮上してきました。
クリエイター=アーティストというパブリックイメージ
アーティストがクリエイターを担うケースは珍しくありません。同じ次元のものを扱う以上、知識技術の相性は絶好です。しかし、クリエイターの仕事はアーティストではありません。おそらく、クリエイターを仕事にしている方なら理解されているかと思います。しかし、周りの印象はどうでしょうか…こんな声がそれなりに聴かれると思います。
「ヒット作が出て認められるようになると仕事が舞い込むようになり売れっ子に成る」
「実績がないうちは安くても仕事をして知名度を上げるべきなんだよ」
「売れないうちは貧乏だって仕方ない、仕事するようになってから金金って言え」
「成功できるのはほんの一握りだ、成功できないんならやめちまえ」
…でもそれって、クリエイターじゃなくてどちらかと言うとアーティスティック(芸能要素)な方面ですよね?
でも、無理はありません。
音楽を作る仕事、というと、真っ先に思い浮かぶのはサウンドクリエイターとかじゃなく、テレビに出てたりするバンドや弾き語りのシンガーソングライター。イラストを制作する仕事と言って真っ先に思い浮かぶのは漫画家。声の仕事と言えば、声優…いずれもアーティスティックな要素が強い立場であるといえるでしょう。アーティストのほうがクリエイターより強いから、というわけではありません。世間への露出を考えれば、どうしてもパブリックイメージではアーティストの方が強いと言わざるを得ません。
芸能関係の仕事のイメージと言えば…
華々しい、人気者、たくさん稼いでる…と言うイメージが有る一方で、売れない人、駆け出しの人はとにかく貧しいというイメージ。今でこそテレビに出ている芸能人、芸人といった芸能職の人は、番組で貧しかった時代のエピソードを語ることもあります。
ここまで話を追いかけてきたのであれば察しはつくと思いますが、そういった芸能関係の仕事のイメージを、クリエイターに知らず知らずのうちに重ね合わせてしまう…クリエイターとアーティストは似て非なる存在なのに、クリエイターもアーティストのような存在だと思ってしまう。そうなればどうなるのか…
クリエイターという技術職に対し、実績がなければ買い叩かれて当然、貧乏なのは売れないから、売れるまでの間は貧乏暮らしがお似合い、脱却できるだけの十分な報酬など必要ない…そういうイメージが支配し、一層クリエイター業を締め付けるだけです。
逆をいえば、人気や実績がある人には、放っておいても投げ銭がたくさん入る…日本の文化は特に、実績がない人を見下し、実績やネームバリューがある人に対しては疑うことなく投げ銭をする傾向がある、それは否定できません。
クリエイターがクリエイターであるために
決してアーティスティックな仕事を批判しているわけではありません。アーティスト的な仕事の方が相性がいいことだってありますし、人気ものになる喜びも得られます。ただ、クリエイターとして生きるのであれば、それはアーティスト的な戦略とは違う、と断言しておきます。
技術職であるという自分の確立
アーティストは表現職、自分の表現したものを評価してもらい、気に入ってもらえたら投げ銭をください…しかし、クリエイターは「気に入ってもらえたら投げ銭をください」ではいけないのです。相手が気に入るものを提供しなければなりません。納める成果物、技術支援、サービス…それらは商品、売り物だからです。
そのためには、自分は何ができるのか、何が得意なのか、それを明確にしておく必要が有ります。時には信頼を損ねかねない苦手なものは販売しないと言う選択肢を取らざるを得ないこともあるでしょう。
買い叩かれないための理論武装
クリエイターが買い叩かれる理由には、専門技術を低く見られることもありますし、「趣味の延長なんだから…」と仕事意識の低さを疑われることもあります。そして、材料費がかからないから、作業工程がわからないから、どれだけのお金が必要なのかを推測できない。更に、制作のための機材を導入、維持するためにはお金がかかる…
何故買い叩きをしてほしくないのか、正当な代価を払ってほしいのか、それを論理的に説明出来るようになる必要がある、というのは、過去の記事でも採り上げてきたと思います。
併せて、しっかりと代価を払ってくれた人に、代価以上のペイをもたらすこと、それを論理とサービスで提示できればベターでしょう。
自信と最低限のプライド
買い叩きは、相手を下に見るから起こります。安請負が横行する背景には、競合相手が多く、相手よりも少しでも高い値段を付けてしまえば他の同業者のもとに離れてしまう事を恐れ、低価格のチキンレースが起こることが考えられます。実績がなければ、相手を納得させるだけの説得力に欠けるというのは否定できず、相手のハートを掴むには相手に得をさせる…結局のところ単純な値下げ競争に行き着くわけです。
しかし、それでやってくるのは、買い叩きを目的としたクライアントであり、「今は安請負だが、今後の大きな仕事のための布石として」と豪語する人が果たして、いい仕事をもたらした、そんなエピソードを聞いたことがあるでしょうか。そしてそれに追従したクリエイターが大成した、そんなサクセスストーリーを聞いたことがあるでしょうか。
実績を積むのは、仕事をコンスタントに手に入れるため。
仕事をコンスタントに手に入れるのは、仕事をして稼ぎ、「食業」とするため。
その仕事に十分な稼ぎがなければ、果たしてどうなるでしょうか。
だったら最初から、十分な稼ぎを約束できる状態を作ったほうが、「食業」とする最短ルートになりませんか?安い仕事や無償での仕事を請負いノロノロ進むよりも、まっとうな報酬を得てその分を機材の購入や新しい知識技術の獲得に投資したほうが、成長度合いは遥かに高いと思います。
それに、買い叩きは相手を目下だと思うからその憂き目に遭う…ならば、堂々と自信を持っている姿を見せれば、買い叩かれることもありませんし、逆にこの人なら信頼できる、と言ったプラスの印象をも与えることになるでしょう。
同じ類の仕事をするにしても、自信がなくそこに付け入られ、悪い環境下で安い仕事をするのと、自信を持って相手から頼りにされ、仕事を褒められてなおかつまっとうな報酬が手に入ること、果たしてどちらがクリエイターとして幸せなことでしょうか。
もしも本当に好きなことをしてお金なんていらない、というのであれば、即座にプロという肩書を捨てるべきです。プロにならなくたって、好きなことをするには十分ですし、プロよりもずっと自由に、好きなことをできると思います。好きなことをできればそれでいい、お金はいらないという人は、クリエイターには向いていないのかもしれません。
なぜ、クリエイターが買い叩かれるのか…
その理由は本記事で挙げたことに留まらず、他の要因もあるでしょう。
ただ、わかっていることは、クリエイターがクリエイターという「食業」として営むためには、クリエイター業を営むと同時に、クリエイターを苦しめる様々な問題に向き合い、解決のために考え、行動しなければならないことが大切である…
いろいろな人がクリエイターとして名乗りを上げられる時代になった一方で、それ故の問題とも言えるでしょう。様々な問題と向き合い、対処できるクリエイターが、今後行こ残っていくことができるでしょうし、様々な問題に立ち向かえる業界だけが、潰れずに生き残っていける、未来を手にできるとも思っています。
クリエイターを、「食業」に…