クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

「させていただきました症候群」の正体見たり

皆さん、おはようございます。

 

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今年の夏は、特に多かったです…

 

「(雑誌名)にて、カラーイラストを描かせていただきました」

「(ゲーム名)にて、キャラのイラストを担当させていただきました」

「(ゲーム名)にて、(キャラ名)の声を担当させていただきました」

という、ツイッター上での声

 

nrts-creator.hateblo.jp

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個人的に「させていただきました症候群」と呼んでいるこれらの件ですが…最近になって、なぜこれらの言い回しが流行っているのかがわかった気がします。

させていただきました症候群の正体見たり

大きく分けて、この2点であると思われます。

 

  • 丁寧な謙譲語としての使用
  • みんな使っているから

特に気になったのが、「丁寧な謙譲語」としての使用でした。

もちろん、謙譲語自体が敬語に当たるので、謙譲語に丁寧だ丁寧じゃないだ、そんなものはありません。

こちらから説明していきましょう。

 

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「ご注文はハンバーグセットとステーキセットでよろしかったでしょうか」

 

これ、テレビで採り上げられるほどに流行した通称「バイト言葉」。

正しくは「~でよろしいでしょうか」というのですが、なぜこういう使われ方が流行ったのか…

「よろしい」との言い方は威圧的(絵面的に頑固親父がウエメセで言い放つような図)、「よろしかった」と言い換えることで言葉の刺々しさがなくなりマイルドになる、という印象があったためと思われます。もちろん、これが流行った理由であるという確証ではないですが。

それと同じことが、謙譲語表現でも起こったものだと思われます。

そもそもツイッター上では何も謙る必要はないのですが、それでも

「(雑誌名)にて、カラーイラストを描いております」

「(ゲーム名)にて、キャラのイラストを担当しております」

「(ゲーム名)にて、(キャラ名)の声を担当いたしました」

という言い回しで十分謙譲表現になっています。

それでもなぜ「させていただきます」という言い回しをするのか…それは

 

「担当させていただきました」の言い回しの方が頭を下げて物腰柔らかな印象を与える

 

ことに起因するものと思われます。

つまり、「~いたしました」よりも「~させていただきました」と言い換えるほうが柔らかくより丁寧な印象を印象を与えるのでベター、という印象があるということです。

 

例えば…こんな例がありました。

「夏コミ3日目、サークル「Magical Muse」さんで委託させていただくことになりました」

 

これ、つまり言いたいことは「夏コミ3日目のこのサークルに委託してもらう」ということですよね…その場合は「委託していただく」という書き方で問題はありません。

「委託させていただく」という書き方をすると、「相手の作品を自分が委託する」という意味合いになるので、伝えたい内容と異なります。

つまり、「~させていただく」という書き方を意識したがゆえに文面が崩壊した例と言えるでしょう。

 

そしてもうひとつ「みんな使っているから」…相変わらずこの影響は大きいです。

業界の先達が「させていただきました」口調を展開する…

だから同じ業界の人がその口調を真似する…これについては、先に挙げた記事でも書いてあるとおりです。

「させていただきました」から脱却してほしい理由

個人的には、どうしても「させていただきました」という書き方は看過できないですね。

そもそも、「させていただきました」という書き方は、自分を下げて相手を持ち上げる意味合いが非常に強く、これ自体は会社内やクリエイターとクライアント間での付き合いで使用することに何ら問題はありません。

しかし、それをツイッターという、不特定多数が見ているところで、クリエイター自らが、自ら謙る姿勢を見せたらどう思うでしょうか。

おそらく、「クリエイターよりもクライアントのほうが偉いんだな」という価値観を直接的ないし潜在的にばら撒いてしまうと思われます。クリエイターからすれば仕事を振ってくれるクライアントは偉いのは当然といえば当然なのですが…もちろん、付き合いのある取引先のクライアントなら、させていただきますという言い回しを使われても、決して驕り高ぶらず、むしろ「クライアントに仕事をしていただいているから会社が回っている」という感謝の気持ちを抱いていることでしょう。

しかしながら、こういう価値観が、少なからず「ああ、クリエイターよりもクライアントは偉いんだな」と思い込んだクライアントが立場でマウントを取り、クリエイターを買い叩く事例に繋がりかねません。立場の優劣を利用し、買い叩きが横行すれば、クリエイターはクリエイターとして食べていくことができず、脱落し、その裾野を失い、ひいては業界の衰退に繋がりかねません。

そしてそれは、クリエイターとしての実力や知名度が高い人がやるほど、その影響力が如実にトップダウンしてくるということです。ツイッターでそれをやれば、招かれざるクライアントにまで一気に拡散してしまう懸念があるのです。

 

だからこそ

 

実力あるクリエイターが

「させていただきました」と

ツイッター上で公言するのは

や・め・ろ

 

と言っているのです。

 

すみません。

汚い口調にしてしまいましたが、この問題は単なる言葉のやり取りのレベルでは収まらない問題だと思っています。

特に昨今、どこかの会社に所属することなく手探りでフリーでのスタートとなるクリエイターが増えている以上、どうしても実力のある人、名が通っている人の影響力が大きくなってしまいます。

 

改めて言います。

 

「させていただきました」って言い方、やめませんか?