クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

音楽制作に必要な「A4の紙」の正体とは

皆さん、おはようございます。

先日、とあるバラエティ番組でこんなことがありました。

 

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「コロナ禍で家にいることが多くなったので、作曲の機材を買いました。

そのなかで、30万円した機材を買ったんですよ…

でも届いたのは、A4の紙1枚だけ」

 

作曲機材というと、機材という名前からし

  • 大きい
  • ゴツイ
  • プロフェッショナルな雰囲気

を感じるかとは思いますが、A4の紙1枚、しかもそれが30万円というのは、衝撃を覚えた方が多かったことでしょう。

では、この30万円のA4の紙の正体とは、いったい何でしょうか。

A4の紙の正体とは

 

その正体は、ソフトウェアのライセンスです。

実際に、その番組中で、A4の紙に10行程度の数字の羅列があるというくだりがありました。

音楽制作は、様々な楽器の音を合わせ、ミックスしてまとめて音源化するというのは、どんなジャンルであれ共通の流れです。

ライブ音源であれば、大雑把には演奏した音をミキサーを通して録音し、整音して音源化する…DTMであれば、ソフトウェア音源を使って音を鳴らし、それらの音をまとめて音源化する…生音を録るかコンピュータ上で鳴らした音を録るかの違いであり、根幹となる作業は同じです。

その作業に必要となるのが、楽曲制作のソフトウェア(DAW)と、様々な楽器の音を収録し、それを鳴らすためのソフトウェア音源と、ソフトウェアプラグインになります。

今回の場合、30万もする、ライセンスが10数行に上ることを考えると、DAWの線は外れますが、楽曲制作の機材を揃えることを考えると、楽器が揃っていないのにソフトウェアプラグインに30万円、というのは考えにくいものです。おそらくは、ソフトウェア音源と思われます。

なぜA4の紙1枚なのか

ソフトウェア音源は、かつてはCD-ROMやDVD-ROMで供給され、サンプリング音源(実際に楽器を奏でた音を収録し、ソフトウェア音源として使用できるようにしたもの)については音素を収録したハードディスクで供給されるものもありました。

理由は簡単です。

収録内容の容量があまりにも膨大だからです。

しかし、今ではインターネット環境が大幅に躍進し、ソフトウェア本体、音素(ソフトウェア音源で鳴らすための音素材)をインターネット経由でダウンロードできるようになりました。結果として、CD-ROMやDVD-ROMなどの光学メディアで販売する必要がなくなりました。

では、A4の紙は何に使うのか?

A4の紙に書かれた数字(または英数字)の羅列は、ライセンス情報です。ライセンス情報は、ソフトウェア音源をインストール、もしくは初回起動時に必要となります。

ソフトウェア音源、ソフトウェアプラグインは販売物。CD-ROMやDVD-ROMで供給されていた頃でも、ライセンスの書かれた紙は封入されていました

なぜなら、ソフトウェアを入れただけで使えるのであれば、ソフトウェアの光学メディアを貸借したり転売したりすることで、複数人が違法に使用できてしまうからです。

逆を言えば、ライセンス情報がなければ、ソフトウェアをダウンロードできたとしても使用できない、もしくはデモ版としてしか起動できません。昨今ではライセンスがない人でもダウンロードできるようにし、デモ版として起動させ、納得いただいたら購入してもらう(=ライセンスを付与する)ケースも多く、販促につながることにも利用されています。

以上のことより、今やソフトウェア音源・ソフトウェアプラグインを購入しても、必要となるのはライセンス情報のみ、それ以外はインターネット経由で揃う…結果として、購入者にライセンス情報を共有するだけで済むようになり、それが、A4の紙にライセンスが書かれたものが送られてきた正体です。もちろん、ライセンス情報をもメールで受け取るとなれば、そのA4の紙さえ送る必要はありません。

 

…と、これがA4の紙に30万円かかる理由です。

とはいえ、DTMを始めようと思ったところで、いきなり30万円のソフトウェア音源をポチる(購入する)のは初心者には想定がつかず、明らかに背後に博識な方がいると見えます。

そもそも、ソフトウェア音源については、DAWを購入すると、一通りの楽器は網羅しているので、ソフトウェア音源を買うとすれば「DAWにバンドル(最初から封入されている)された音源では足りない音がある」「DAWにバンドルされた音源よりも上質な音を鳴らす必要がある」ということになります。それに気づかない限り、ソフトウェア音源を新調する、というのは考えにくいものです。

これはどう考えても「趣味で音楽制作を始めよう」という範疇を超えているのではないでしょうか…