クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

インボイス・ハラスメントにご用心

皆さん、おはようございます。

 

確定申告の季節が終わりましたが、クリエイターにとって身近な話題が「インボイス制度」。

間もなくこの制度が導入されますが、導入されることにより、「クリエイターに消費税増税の義務が課せられる」という声が多く、それが本当であればインボイス制度はクリエイターにとっての悪法と言わざるを得ないのですが…

果たして、本当にそうなのでしょうか。

確定申告の話題でNRTSブログを更新した際、インボイス制度について調べてみました。

nrt-sound.net

インボイス制度とは

インボイス制度とは、事業者が売り上げに対する消費税分に対し、売り上げに対する仕入れ段階での消費税分を証明することにより、納税に必要な消費税分を軽減する制度であり、仕入れ段階での消費税分の証明が「インボイス」と呼ばれます。

例えとして…

 

製品の売り上げが税込110万円発生した場合、消費税分の10万円を納税しなければなりません。

しかし、製品または製品に必要な材料の購入の際の支払い55万円において、消費税込みの材料費を支払い、なおかつ材料費のうちの消費税分を、材料費を支払った下請けの事業者が消費税額分を納税することを証明できる場合、製品の売り上げ110万円に対する消費税分10万円から、材料費55万円の消費税分5万円を差し引いた、5万円分を納税すればよくなります。

これがインボイス制度であり、この時に下請け事業者が材料費分の消費税を納税することを約束し、発行する的確請求書のことを「インボイス」と呼びます。

 

というわけで、インボイス制度とは、事業者が下請事業者から的確請求書を発行してもらうことで、納税すべき消費税を減免する制度のことです。

おしまい。

 

…終わっちゃダメだ。

インボイス制度がクリエイターに及ぼす影響とは

本題に入ります。

 

ではなぜ、インボイス制度がクリエイターを苦しめる悪法と呼ばれるのでしょうか。

結論から言うと、インボイス制度の導入により、売り上げが1000万円以下である免税事業者(※クリエイター含む)に消費税の納税を課せられることはありません。もしインボイス制度により免罪事業者にも消費税の納税を課せられるようになるというのであれば、それはインボイス制度ではなく、税制の改悪と言われるはずです。

問題なのは、インボイス制度の導入により、免税事業者であるクリエイターに対しても、的確請求書発行事業者になるよう強要する局面が発生することにあります。

先の例で、製品の売り上げに課税された消費税分のうち、下請事業者が消費税分を支払うことが約束される場合、製品の売り上げから下請事業者に支払いをした額面のうち、消費税分を減免することができると書きました。

では、下請事業者が免税事業者だった場合、どうなるでしょうか。

免税事業者には消費税の納税義務はありません。その代わり、消費税を納税する義務がないため、的確請求書、つまりインボイスを発行することができません。

そうなれば当然、製品を売り上げた時の売り上げに対する消費税から製品の製造に必要な材料費を支払った際の消費税が減免されることはなく、売り上げと材料費の両方に消費税を支払うこととなります。当たり前ですが、その分だけ企業の利益は減少します。

結果、インボイスを発行できるクリエイター及び事業者が選ばれることとなり、インボイスを発行できない免税事業者に相当するクリエイターや事業者は選ばれないといった事態が想定されます。

だったら、的確請求書発行事業者になればいいのでは?

的確請求書発行事業者になれば、インボイスを発行することができるようになりますが、的確請求書発行事業者になるには審査が必要であり、仮に審査に通ったとしても、インボイスを発行できるということは…

 

そうです。

インボイスを発行できるということは、免税事業者と同程度の売り上げであっても、消費税の納税義務が発生するということです。

免税事業者と同程度の売り上げで消費税の納税義務を課せられるということは、単純計算で売り上げの10%を税金として納税しなければなりません。免税事業者でいられるということは、売り上げはお世辞にも高いとは言えないということです。その状態で、売り上げの10%が徴収されるということが、どれだけクリエイターを食いつなぐうえで負担となるか、想像するに容易いでしょう。

まとめ

インボイス制度の導入により、売り上げに対する消費税の納税額を減免できる

・売り上げに対する消費税の納税額の減免にはインボイスの発行が必要

インボイスは免税事業者は発行できない

インボイスを発行できない免税事業者に相当するクリエイターが敬遠される懸念

インボイスの発行には的確請求書発行事業者になる必要がある

・的確請求書発行事業者になった場合、消費税の納税義務が発生する

特にインボイス制度が騒がれた際に、衆議院議員選挙が重なったこともあり、政権与党への投票をそらし、特定野党への投票を促す動きに利用されたことも「インボイス制度によりクリエイター(免税事業者)に消費税の納税義務が発生する」と短絡的な結論が蔓延した要因であると言えるでしょう。

確定申告の際にインボイス制度を調べるまで、インボイス制度がクリエイターを苦しめるのであれば、導入には反対とのスタンスを堅持していました。しかしながら、調べることにより、インボイス制度がなぜクリエイターを苦しめるのか、果たしてインボイス制度はクリエイターの敵なのか、その概形が分かった気がします。

インボイス・ハラスメントにご用心

ここでタイトルの回収です。

では、インボイス制度に対して、どうすればいいのでしょうか。

結論から言えば、インボイスに由来する不利な要求に対しては、消費者庁などへの相談など、然るべきアクションを起こすべきだと思います。クライアントとの関係が悪化すること(=干される)を懸念するのはわかりますが、クリエイターを大切に見ていないクライアントとの付き合いは、遠からず破綻します。

「的確請求書発行事業者になるよう強要された」

「的確請求書発行事業者にならなければ依頼しないと言われた」

インボイスを発行できないことを理由に報酬を減額させられた」

インボイスを発行できないことを理由に継続依頼を打ち切られた」

これらは下請法でも対応できるケースがあるかと思います。

今後、インボイスをめぐる、クライアントとのトラブル事例は、残念ながら発生してしまうでしょうけど、同じだけ、インボイスに対するハラスメントへの防衛となる情報や施策が出てくることも予想されます。

 

クリエイターとクライアント…

それは決して、いがみ合う関係性でも、敵対する関係でもありません。

ビジネスパートナーです。

 

クライアントがクリエイターを守り育てる、クリエイターは作品をもってクライアントに応えコンテンツを花開かせる…

お互いが協力し合うことが、業界の幸せであることに、変わりはありません。

 

参考

www.webjapan.co.jp