クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

なぜ無償請負はいけないのですか

皆さん、おはようございます。

 

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今回は単純に「なぜ無償請負がいけないのか」について説明したいと思います。

なぜ無償請負はいけないのですか

簡単に説明すると、以下のとおりです。

ここでは、無償請負を、完全な無償、なけなしの有償を含むものとします。

  • 無償請負が横行する
  • 同業者に迷惑がかかる
  • 実績にならない実績を生む
  • 仕事を請け負ったことに対する責任を負う

無償請負が横行する

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無償で請け負ってくださいというクライアントの声に応えて、なぜ悪いんですか?

 

あなた自体は無償で請け負う気まんまんだとしても、その一部始終が他の同業者に迷惑をかけます。

あなたが無償で請け負ったその瞬間、「クリエイターの仕事を無償で引き受けた」という前例が発生します。同時に「無償で引き受けた存在」を知らしめることになります。するとどうなるでしょうか。

おそらく、大多数のクライアントは「絵や音楽に金を払って作らせるなんてバカバカしい」と思うでしょう(クライアントにかぎらず、ニコ動やYouTubeに無料で上がってくるのだから無料で作ってもらえると思う一般の人も少なくない)。

もちろん、クリエイターの中には無償で引き受けなどできない、と反発する人もいるでしょう。しかし「みんな無償で仕事をしている」「実績がないうちは無償でも引き受けないと、いい印象を抱かれず、将来干されかねない」「仕事をしたい人は他にいる、くだらないプライドを抱え込み、他のクリエイターが上り詰めていくさまを見つめ、大成できずに引退すればいい」と、上から目線で脅されれば、折れてしまうケースもあります。特に最近では、業界に関わる(もしくはそれを匂わせる)クライアントにもそういう傾向が見られます。

同業者に迷惑がかかる

無償請負もそうですが、実績欲しさに仕事を安売りすることも、同業者に対して脅威です。ここで言う仕事の安売りには、無償激安案件に応えること、買い叩きに応じることだけでなく、自分の仕事をイタズラに低価格を付ける(低評価を付ける、ではない)ケースも含まれます。

例えば、ボーカル曲のオケ制作を、オケの完パケまで含めて3万円で請けたとなれば、先の話同様、クライアントは「3万でボーカル曲のオケが完パケ出来る」という前例を手に入れます。そうなると、それよりも高いまっとうな価格で請け負っている同業者には、お世話になっている人が安い方に流れ離れていく、激安価格での制作交渉を強いられるといった実害が出てくるでしょう。更に言えば、専門分野において同業者が仕事を維持できなくなり潰れていけば、業界そのものが衰退することにもなりかねません。

実績にならない実績を生む

無償請負の常套句は「実績になるから今は無償でも請け負うべき」ということですが…

確かに実績になれば、他に仕事を得ていく際に、こういう仕事を請け負いましたという物証を得られるため、一見すると将来のための投資とも取られるでしょう。

しかし、クリエイターとして制作に携わったその作品が、必ずしも自分の実績であることを客観的に証明できるとは限りません。作品の仕様上、スタッフロールやクレジットがないものもありますし、それを紹介しているサイトでクリエイタークレジットを掲載していなければ、自分で主張するしかありません。自分で主張するにしても、問合せを受けたならともかく、問合せも何もない状況であれば、サイトやブログ、ツイッターなどのSNSで紹介するわけですが、正直、情報を捏造しようと思えばできるので、その信頼度は決して大きくないでしょう。

それだけではありません。

これまで、ランサー系サイトで楽曲制作の仕事募集に対して提案をしてきましたが、依頼の希望予算が真っ当な価格よりも大きく低いほど、依頼自体のキャンセル率が高い傾向にあります。同人ゲームの音楽制作でも似たような経験があり、無償で音楽を提供したプロジェクトが、日の目を見ることもなく頓挫し、消滅した事例もあります。特にプロジェクトの頓挫は、制作に予算をかけないものほど、そうなりやすいように思えます。実際、楽曲制作を請け負ったプロジェクトのうち、しっかりと支払いがされたプロジェクトでは、今のところ頓挫したケースに出会っていません。そこには、「予算をかけているのだから何が何でも実現させる」という思いもあるのかもしれません。もし、制作に予算をかけなければ、プロジェクトを廃棄しても被害は少ないですが、制作に予算をかければ、プロジェクトを廃棄すれば何も回収できません。前者と後者、果たしてどちらが、プロジェクト頓挫に至りやすいでしょうか。

当然、実績になるからという言葉を信じて無償で請負い、作品を制作して納品するも、プロジェクト自体が頓挫してしまえば、あなたがした仕事は、果たして何だったのでしょうか。

仕事を請け負ったことに対する責任を負う

仕事をするということは、仕事をするという契約を結ぶことになります。そこには、有償無償、関係ありません。

もし納品したものが、あからさまに過去に発表された誰かの作品と酷似していたとしたらどうでしょうか。当然、そうならないものを作り直す必要が出てきます。もちろん、有償無償問わず、クリエイターとして追加料金無しに修正をし、その責務をまっとうしなければなりません。それが元で裁判沙汰になったら、賠償を支払う、裁判に応じるなど、莫大なリソースを取られることになります。

また、制作の最中に自分の機材やスタジオの機材を破損したという事態が発生したら、それに対する補償も自分で行わなくてはなりません。後者は気をつけていればなんとかなりますが、前者については仕事で使い続けている以上、どこかしらで遭遇する可能性が有ります。もし制作環境を立て直せなくなったら、最悪志半ばに廃業しなければなりません。

仕事を請け負うというのは、仕事に対する責任を負い、その代価は生活や機材強化に充てるだけではなく、万が一のときのための蓄えにもなります。

無償で請け負ったとしても、仕事を請ける以上、仕事に対する責任はまっとうしなければなりません。無償請負というのは、代価ゼロで承諾した仕事の契約です。まっとうな代価と同じだけの責任が発生します。決して、代価がないから、代価が安いからという理由は責任を放棄していい理由になりえません。そんなことをすれば、悪評はたちまち広まり、意図しなくとも干されるでしょう。また、まっとうな代価を提示してくれるクライアントのほうが礼儀が良く、無償や買い叩きをするクライアントほど横柄でリテイクや無茶な要求ばかりする傾向があるとも言われています。

それでもなお、プロであるためには身を削るべきだと自らを擲ち、無償依頼に応えるべきだと思いますか?

同人界隈に本当の意味の無償請負は存在しない

同人ゲームを制作する際のイラストや音楽の募集、同人音楽のCDジャケットのイラストについては、人によっては無償で請け負うというケースも珍しくありません。もちろん、これを無償請負は止めるべき、と非難することはありません。

ただ、同人界隈での無償請負は、果たして無償なのでしょうか。

問題となっている無償請負とどう違うのかを、挙げてみました。

  • 友人、知人など、信頼できる相手に依頼する
  • 必ず特設サイトやブログ、ツイッターSNSでクレジットを記載する
  • 協力したクリエイターの活動情報を積極的に拡散してくれる
  • 協力したクリエイターからの依頼にも喜んで応じる

など、制作について金銭の授受はなくとも、それに替わる恩恵はあります。

なので、完全に無償というものはなく、場合によっては金銭を伴う以上のリターンをもたらすことがあります。

それと比べると、クリエイターへの無償依頼には…

  • とにかく初対面
  • 仕事を振る自分が偉く、クリエイターを下に見る
  • クリエイターの活動情報を拡散するわけでもなく
  • 無料で作らせて、終わりの完全無償依頼

この状況で、果たして無償依頼が、クリエイターのためになるのでしょうか。

無償請負の事案を防ぐためには

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1にも2にも、クリエイターとして自分の仕事に価格をつけることです。

自分はこの仕事にどれ位の時間を費やすのか、その時間数に時給を付けて計算してもいいですし、同業者のサイトを調べるのもいいでしょう。激安を謳っている業者や個人であっても、それなりに真っ当な値段をつけているはずです。

間違っても「自分は実績がないから…」と尻込みしてはいけません。実力や実績がどうであれ、クリエイターとして仕事をすると公言した以上、あなたはプロのクリエイターです。あなたの行動ひとつが、プロのクリエイター全体を映す鑑となります。

自分の仕事にしっかり値段をつけられ、クリエイターとして生業とすることを目指すクリエイターが増えれば、自ずとクリエイターの立場は強まり、無償請負の事案に毅然とNoを突きつけることができるでしょう。クライアントが無償激安で買い叩きたいとしても、無償激安で応じてくれる人がいなくなれば、姑息な戦略を捨て、真っ当な価格を提示する他ありません。

 

nrts-creator.hateblo.jp

 クライアントが真っ当な価格を突きつける…んな夢物語な。

 

その夢物語を実現しないと、クリエイターが食業として食っていけるようにはなりません。クリエイターが食業になるというのは、クリエイター業が正社員と同じ1職業として認められること、1職業としての当たり前を手に入れることだと思います。

 

クリエイターを、「食業」に。