人や物の評価に減点法はやめようぜ
皆さん、おはようございます。
人や物を評価する時、5段階評価、100点満点といった評価をすることが多いと思います。
しかし、このような評価については、様々な問題があります。
その最たる例が、減点法です。
減点法とは
5段階評価であれば5から、100点満点であれば100点からスタートし、減点要因がある場合は減点して、すべての評価項目を審査した時の持ち点が評価になる、というものです。特に珍しい評価方法でもなく、よく使われているものです。
特に、安全装置や職場環境など、欠点があっては困る現場や製品については、まず減点法で評価されていると言っていいでしょう。減点要因というのは、安全ではない要因、安定性を欠く要因、リスクファクターとなりうる要因などが存在するわけで、仕事や製品の安全を維持するには、直ちに取り除かなければなりません。
ご安全に!
丸いものは―転がる
高いところにあるものは―落ちる
など、工場や作業現場にはこういった安全のためのスローガンが掲げてあることが多いと思います。たとえドライバ1本床に転がっている程度でも、いつ何時、誰が踏みつけて転倒するかわかりません。2m以上の高さでの作業には、ハーネス(転落防止用の命綱)の着用が義務付けられています。危険を伴う作業現場では、常に最悪の状況を考え、リスクファクターを最大限除去し、その状態を維持することが求められます。安全な状況を100点とし、安全ではない要因がある度に減点することで、その現場がどれだけ安全度を維持できているかを数値で把握することができます。
減点法を使うべき、使ったほうが良い現場があるというのは確かです。
減点法で評価しないほうがいいものもある
今回伝えたいのは、危険を伴う現場や食の安全管理などの減点法ありきなシーンではないのに、減点法で判断するのはどうなのか、ということです。
結論から言うと、減点法で判断する必要がないなら、減点法で判断するのは直ちにやめようぜ、ということです。あくまでも、減点法で判断する必要がない物事であり、減点法そのものを批判するわけではありません。
なぜ、減点法で評価してはいけないのですか?
必然的に評価対象の悪い面ばかりを見るようになる
減点法は最大点数を持ち点に、様々な要因を精査し、評価できない項目に応じて点数を減らしていくやり方です。当然ながら、物事を評価する際に、減点対象となる要因を探すことになります。
減点法での評価を続ければ、人や物などを判断する際に、物事のいい面を純粋に感じ取れず、その中にある悪い面ばかりを探そうと、あら捜しをするようになるでしょう。
80/100点は80点にあらず
人を100点満点で評価した時、80点であれば、その人は80点であるとはいえます。しかし、評価した人にとって、その人は80点ではなく、マイナス20点の要因を持った人であると判断し、その人のマイナス20点たる要因ばかりに固執するようになります。そして、減点法で80点と判断された人もまた、80点ではなくマイナス20点であると判断し、80点残ったことに自信を持てず、逆にマイナス20点を自責することになりがちです。
なぜなら、80点残ったことを喜ばしいと思う要因がないからです。
評価対象のいい面で挽回できない
人の評価は、何も1つの物差しで測ることはできません。
加点法で考えると「この人は完璧だが強面だ(-20点)、でも、子供に優しく暖かい父親の様子を見せるのがすばらしい!(+20点)」という、挽回できる要因で帳消しにできる評価も、減点法の場合、マイナス20点の要因で減点され、プラスアルファになる要因で挽回することができません。
これがその人の職業適性を測るなど、安定した運営に関わることであれば減点法でも問題ないですが、それ以外のシーンにおいては、果たして1つの物差しだけで測りきることができるのでしょうか。
減点法で減点されたら、満点をとることができないのです。
満点評価をすることへの抵抗感
満点評価はしっかりと評価していないと見做されやすく、減点法では満点評価を得ることが極めて難しくなります。
先述した、いい面で挽回する事が可能な加点法であれば、「これはマイナス要因がある。でも、それを上回るだけのプラス要因があるから、俺は100点だね!HaHaHa!」といった評価も可能でしょう。
評価のダイナミックレンジが下がる
☆5満点だと☆5をつけるのは気分的にも難しい。でも☆1だとこれでもまたしっかり評価してないようにみえる…
実際、いろいろなものを☆5満点で評価した際に、良くて☆4,ひどくて☆2,大多数は☆2~4の範囲に収まってしまうものではないでしょうか。
特定の減点要因や感情が異常なまでの低評価につながる
特にネット上でのレビューで顕著に見られます。
「ほかは完璧なのにどうしても許せないマイナス要因があった、だから最低評価を下した」というレビュー結果やコメントは多く見られます。そのマイナス要因が、果たしてその製品やサービスといったものの根幹を揺るがす致命的なものなのか、それともその人にとっては致命的なのか、それを判断する術はありません。しかし、ネット上のレビューには最低評価として残ります。それがその人にとって気に食わないレベルで最低評価を下した程度であっても、そのレビューを見た人は「この製品やサービスは最低評価を得ている」という印象を受け、敬遠されてしまうことにもつながりかねません。
じゃあどうすればいいんでしょうか
何度か出てきましたが、加点法にすればいいんじゃないかな。
あとは、良くも悪くも、曖昧な評価をする。
前の記事でも書きましたが、評価の語彙力を下げる。
外食をした時…
「素敵なレストランだー!」
「わ~美味しそうー!…もぐもぐ…おーいしー!!(⌒▽⌒)」
「お店の中、すごくおしゃれだよ!」
「ごちそうさま!100点満点で、200点!」パパパパッパパー♪
満点とは何だったのか。
でも、その評価の仕方であれば、このレストランがいかに素晴らしいところだったかがわかりやすいと思います。ただその反面、0点、はたまたマイナス∞の評価をされるケースも出てくるでしょう。減点法の評価で問題となった、特定要因で評価点が激減するという問題は、加点法でも問題となりえます。
加点法でも減点法でもそうですが、「なぜ大幅な加点をしたのか」「なぜ大幅に減点をしたのか」というのを併せて明記する必要もあります。一つの要因が原因で減点され、他のレビュアーと比べて大幅に低い評価を下したとしても、その原因が何かさえわかれば、1つの低評価に振り回されることなく、正しく評価することができるでしょう。
また、自分がレビューする際に極端に低評価を付けてしまった場合、その低評価を付けた理由を明記しておけば、後に自分がどういう観点を持って評価したかというのが、客観的に判断できることにもなります。
加点法のメリット
加点法のメリットは、減点法のデメリットを補うと言ってもいいでしょう。
その中でも極めて高いメリットはやはり、加点法にするとその物事のいいところを見るようになる、ということでしょうか。いいところを探そうと思って評価に臨めば、自ずといいところに目が行きやすくなる視点が身につく、そう思います。
もちろん、減点法はダメということもありませんし、レビュー1つにとっても、加点法で判断する人がいれば減点法を用いる人がいてもおかしくはありません。人がどこに着目して評価するのか、それは人それぞれだからです。
ただ、なんでも減点法を用いて支配されてネガティブな視点ばかり鍛えられるよりは、いいところを見つけるようになれば、人からも好かれるでしょうし、何より悪い面ばかりに触れて濁ることがなくなるでしょう。
深淵を覗き込む時、同じように深淵に見つめられている
いいものはいいね、と素直になれることを、大切にしたいものですね。