クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

安物買いの銭失い

皆さん、おはようございます。

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シルバーウイークという、先月も先々月も普通にあったのと同じ3連休を前に、こんな問題が湧き出ました。

 

大磯町の学校給食問題

 

matome.naver.jp

 簡単にまとめるとこんな感じです

  • 大磯町の中学の給食に、安い委託金で業者に弁当を依頼
  • 生徒から飛び出す「まずい」のオンパレード
  • (給食なのに)弁当が冷たい
  • 31人中30人が食べ残すという異常事態
  • 味がまずいだけじゃなく、異物混入事案も頻発

当事者にとっては不幸な出来事ですが、ネット上では「安い業者を選んだ結果」「癒着ではないか(神奈川県大磯町の話なのに業者の所在地が神奈川県綾瀬市)」「作って移動までの時間が長いから劣化する」といった声が多く上がりました。

しかし、このエピソードを受けて思うことは、やはり「安さを理由に業者を選定したところ、お粗末な仕事をされた」ということではないでしょうか。

こういう出来事、以前であれば「学校給食が出る分だけありがたく思え」「給食を食べさせてもらってるのに文句を言うとは図々しい」などという声で封殺されていたかもしれませんが、ひとたびこういう事件が起こるとあっという間に拡散され、情報が共有されるご時世、押さえ込むことができなくなったと言うだけでなく、世間一般が「仕事を安い値段で了承されることに対して疑念を抱くようになった」こともあるでしょう。

これがクリエイター問題とどう関係あるのか

この事件の焦点は、先に挙げたとおり安さで業者を選んだ結果、お粗末な仕事をされた、ということにあります。もちろん、安くて良い仕事をする業者もありますが、やはり同じ仕事をするにおいても、仕事の質と額面は相関性が高いと思われます。なぜなら、仕事を請け負う受けで提示する額面は、その業者の実績…つまり仕事を遂行した記録に裏打ちされるところが大きいからです。

特にクリエイターは、駆け出しの時代は実績がなく、自分の魅力に気づかない、自分の実力が認められるかどうか不安、クライアントに好かれたいなどの理由から、どうしても毅然として額面を提示することができない気持ちは否定できません。

それを考えると、実績を積むには、手っ取り早く仕事を手に入れるには、妥協をする方面に走りがちです。仕事がほしいので相場を逸した額面を提示してお願いしに行く…単純に考えれば、クライアントからすれば同じ仕事を安い値段で請け負ってもらえるのは魅力的なものです。

しかし、クリエイターへの依頼については、トラブルが少なくないのもあります。そしてそれはとりわけ、仕事への意識が希薄なことが原因であることが多く見られます。

  • 締切に間に合わない
  • 即時応答性に欠ける
  • 納品された成果物の品質が悪い
  • 最悪、仕事を放棄して音信不通

無償だったり激安だったりと、クライアント側に是正を求めたい要因はありますが、それでも、仕事を請け負った以上は職務をきっちりと履行するというのは、プロとしての必要最低限であり、請け負った条件が劣悪だから厳守しなくていいなんてまかり通りません。条件が劣悪だったら請け負わなければいいだけで、請け負ったというのは劣悪な条件だろうとそれに合意したという証左です。

それに、クライアントだって「仕事を途中で放棄されたら実害を被る」ことになります。仕事を投げ出しそうな人に、仕事を依頼しようと思うでしょうか。

クリエイターが先手を打て

良くも悪くも、安かろう悪かろうの時代が到来しつつある、それが今回の事件を受けての感想でした。日本で無償請負や激安請負が横行しているのは、実績をちらつかせればホイホイと請け負ってくれる人材が多数あぶれているというのもありますが、「安かろう」であってもそれなりの水準の成果物が手に入ることも要因なのかもしれません。無償で請け負うと公言する人の作る成果物が、クライアントの考える最低水準を超えていれば、余程魅力的な要因がない限り、まっとうな金額を提示しているクリエイターを選ぶ理由なんてありません。

しかし、安さゆえに悪い仕事を引いてしまったという事例が共有されれば、見方は変わってきます。例え安く仕事を済ませたいとしても、目的はあくまでも「仕事を依頼して適切に遂行してもらう」ことにあるので、安さゆえに仕事の遂行が達成されないと懸念すれば、無償激安で請け負うという付け焼き刃は、売りとしての魅力を失います

無償でも仕事をする、安くても仕事をする、修行させてください…

これらのクリエイターの言葉は、一見すると前向きに聞こえます。

でもそれは、裏を返せば、「プロを名乗っているくせに『自分の仕事は未熟です』と公言している」ようなものではないでしょうか。果たしてクライアントは、その分野のプロフェッショナルに、「値段を落とすから未熟な仕事をしてもいいですか?」と言われて、快諾してくれるでしょうか

今回の事件を受け、例え安くても仕事をしっかりしてくれるところがあるにせよ、安いには安いなりの理由があると思う人は一層増えたのではないでしょうか。

これから、安い仕事をすると思われたクリエイターは、尽く仕事を逃していくと思います。逆をいえば、毅然とした額面を提示し、良い仕事をするクリエイターが増えれば、その金額が当たり前になり、買い叩き案件に対しても堂々とNoを突きつけることができ、不当な金額での請負を締め出すことにつながるでしょう。

 

いい仕事をキッチリして、然るべき額面の報酬をいただく…

それはクリエイターとクライアント、双方Win-Winの結果をもたらす…

 

そうは思いませんか?

 

クリエイターを、「食業」に。