クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

クリエイターズマンションを作りたい

皆さん、おはようございます。

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クリエイター業専業を確立すべく、クリエイター、クライアント、社会環境といった要因に対してこうあって欲しい…それをメッセージに発信していくこの「クリエイターを、『食業』に」のブログなのですが、それだけでなく、実現したいと思っているのが、今回タイトルに掲げたクリエイターズマンション構想です。

クリエイターズマンション構想とは

簡単に言うと、1つの建物にクリエイターに対して居住環境を安値で提供し、その中に会議室やコワーキングブース、ミキシングブースといった専門的な創作活動に必要な設備が整っている、そんなマンションです。

 

なぜクリエイターズマンションを建てたいのか

異業種とのコワーキング環境

イラスト、音楽、動画、声優、プレイヤー、ゲーム制作者などの相性がいいクリエイター同士が同じ建物に居住することにより、マンション内でコンテンツ制作を完結させることができ、プロジェクト立ち上げや企画で簡単に集まることができる。特に上記業種のクリエイターについては、制作についての相性がよく、思いつきで立ち上げた企画も、熱いうちに協力して制作し、発信することができる機動力の高さを発揮できるでしょう。

クリエイターズマンション自体が営業所になる

当然、外部クライアントからしても「ここに行けば必要なクリエイターを一通り用意できる」「何かあった際に代替えのクリエイターが確保できる」という存在が周知され、自ずとクライアントが赴き、営業に関するコストを大幅に削減できるでしょう。

経済的な負担を軽減する

クリエイター業については、絵にせよ音楽にせよ、機材の調達や設備の使用にはお金がかかる上、自立できるまでに時間がかかります。それまでに経済的に行き着かなくなり志半ばにクリエイター業を放棄するケースも考えられるでしょう。

普通の物件よりも安い居住環境と、制作機材、制作環境を提供することにより、最低限クリエイターが自立するまでの経済的負担を軽減することで、クリエイターが制作の仕事以外にコストを割くことを減らす狙いがあります。

 

nrts-creator.hateblo.jp

 

地方クリエイターの抱える格差

特に現在、地方で楽曲制作業を営んでいることもあり、これは切実です。

地方にいることが、クリエイター業を営む上で不利であることは多く、地方在住というだけで敬遠され仕事が振られないというケースも有ります。とはいえ、地方のクリエイターが「じゃあ大都市に出てくればいいじゃん」という一言で大都市に出てくるのは無理があるといえます。

優先的に彼らに経済的負担の低い制作環境を提供することで、地方クリエイターの格差を縮め、地方ゆえに才能を無駄に捨てる状況を少しでも多く是正する一助となるでしょう。

プロとしての教育の場・斡旋の場になる

クリエイターとして自立するには、仕事をこなす実力も必要ですが、それ以上にクリエイターとしての、1商売人としての心構えが必要となります。クリエイターを集めることにより、彼らに対してプロとしての心構えの教育を提供することもできるでしょう。

また、クリエイターが集まる場所ということを利用し、そこに住むクリエイターを狙い、正社員雇用の情報を持ち込み、斡旋することにも役に立つと思います。コネを手に入れる為に専門学校に入る必要はありません。

 

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目指すのは、マルチメディアクリエイターたちのトキワ荘

プロのクリエイターを育てる環境を作り、遺していきたいと願っています。

 

…で、終わる訳にはいきません。

クリエイターズマンションに関する問題

クリエイターズマンションができれば、クリエイターにとっては有利であることが多いでしょう。しかし、運営における問題は避けて通れません。

クリエイターズマンションができて、想定しうる問題を挙げてみます。

居住する条件はどうするの?

クリエイターを目指したいという人を住まわせるのだが、果たしてどれぐらいのクリエイターの才能的な条件を要求するのか。

  • クリエイターになりたい、でもスキルはない
  • クリエイターになりたい、それなりに制作の基礎は持っている
  • クリエイターとして仕事をしていて、大都市に出て来たい

しかも、決してその許容量は多くないので、「地方から出てくるクリエイターに救いの手を!」とか言っておきながら、地方から出て来たいクリエイター同士、プロのクリエイターを目指したい人同士が競合することになり、その場合何を判断基準とするのかで悩むことになるでしょう。実力で足切りしたら、それこそプロとして活躍したいという熱意を裏切ることになりかねませんし、熱意だけを見ても、ある程度スキルを積んでいる人とくらべても不利であることは揺らぎません。

地方優遇というのは差別に当たる?

地方に住んでいるクリエイター志願者に救いの手を差し伸べたいというのはありますが、当然、地方じゃなくても救いの手を差し伸べて欲しいクリエイターはいます。

  • 大都市からどれくらい離れているところを地方とみなすのか
  • 地方出身者と大都市近郊の人が競合したら地方を優遇するのか
  • 地方優遇は「地方クリエイターは冷遇される」の逆バージョンではないのか

確かに地方出身者を優遇したいというコンセプトは強いですが、一概に地方出身者だから優先しますと安直に考えるのは待ったほうがいいかもしれません。

外部からの利用はどうするの?

クリエイターズマンションに住んでいる人は、何もマンション内の人とだけコワーキングするとは限りません。外部のクリエイターともコワーキングするのですが、問題は外部の人がクリエイターズマンションの設備をどれだけ使えるのかということです。

外部の人は一切使えないというのはまずありえませんが、クリエイターズマンションに住む人がいれば使えるというのは妥当でしょう。しかし、外部の人にクリエイターズマンション内部の設備を使わせることを目的として招くのと、クリエイターズマンションの居住者が内部の設備を使うのを区別するのは大変難しいですし、外部の人に設備を使わせることを利用し、マージンを取るということも懸念されます。

クリエイターの活動を監視される?

当然ながら、クリエイターとしての活動を支援するためにクリエイターズマンションに住まわせるということになるのですが、そのためには、クリエイターとして活動していることが前提でなければなりません。

クリエイターとして活動しているのかどうか、それをどうやって見極めるのかが難しいところになります。仕事が来なかったらクリエイターとしての仕事をしていないという判断は早計過ぎますし、月ごとにわざわざ報告書を書かせるのは、報告書の制作が心身ともに負担となりますし、何より生活を監視されているという印象を与えます

芽が出なかったら追放するの?

クリエイターとして活動していても、そう思うように仕事が来ないというケースもあると思います。その場合、仕事をしていないとみなして追放することになるのでしょうか。追放された側からすれば、居住空間を失い、機材を失い、仕事のあても失いと、路頭に迷うことになると思います。

そうならないために、ある程度芽が出なかったらクリエイター以外の職を斡旋するというのも一つの手かもしれませんが、それもクリエイターの活動の監視となるでしょうし、何より「きみはクリエイターには向いてない」と宣告されるようなものです。親に裏切られたようなその心境、あまりにも酷であるとしかいえません。

機材の維持管理や契約などの問題は?

当たり前ですが、音楽制作においては、ソフトウェア音源やプラグインを使えるのはそのソフトウェア音源のライセンス所持者です。iLokなどのドングル認証を要する音源やプラグインは、iLokを借りて制作した場合、規約違反になります。特に、制作機材を共用する場合、そういったソフトウェアライセンスのリテラシーについて厳正にしておかないと、複数のクリエイターが害を被り、同時にクリエイターズマンションの信頼問題に関わってくるでしょう。

だったらいっその事法人化したほうがいいんじゃないの?

クリエイターズマンション自体を法人にし、住人を社員として考えれば、権利問題などはクリアできるでしょうし、個々のクリエイターで独自にコワーキングするよりも、営業や仕事集めの面では有利に働くとは思いますが、反面、クリエイターの自由度は下がります。会社なので利益を上げなければならず、家賃は徴収するどころか居住にかかる費用は全額負担し、逆にクリエイターに賃金を払わなければなりません。そうなると、クリエイターは自由に制作活動を行えなくなり、クリエイターズマンションという法人が請け負う制作を優先させられることになるでしょう。それだったらクリエイターズマンションじゃなくて一般企業でもいいわけですし。

目指すのは、プロのクリエイターを育てる環境づくり

専門学校は、知識技術は教えても、仕事の取り方は教えてくれません。

制作現場は、熱意だけでは雇ってくれません。

ネットに目を向ければ、ネット上で華々しく活動しているアマチュアクリエイターを実績をチラつかせ言葉巧みに引っ張り、相場を逸した安値で買い叩き仕事をさせ、使い捨てる…これでは、クリエイター業は先細り、遠からず死滅します。

クリエイター業だけではありません。教育することにコストを支払わず、才能を持った人を探し引き抜き、安く使い倒す業界に、未来はありません。自生する野苺をつまみ食いし続けていれば、やがて枯渇します。

それを防ぐためにも、クリエイターがプロとして誇りを持って仕事に臨み、活躍し続けるためにも、なんとしても後進のプロのクリエイターを育成する環境、それを用意しなくてはなりません。制作技術があるだけの人を、プロとは呼びません。

この構想が実現できる保証はありませんし、実現できてもどれくらい時間が必要なのか全く検討はつきません。しかし、後進のクリエイターを育てようと、クリエイターとして人生を擲つ協力者が増えれば、プロのクリエイター業を、業界を立て直し、「クリエイターを、『食業』に」という、本懐を遂げることができるでしょう。

 

クリエイターを、「食業」に…!