皆さん、おはようございます。
音楽制作を本業にするというと、よく聞かれる声が「1日1曲作る」「100曲作る」といったものです。こういう生活を継続することが、プロになれる、プロにはそれぐらいの気概が必要だ、ということらしいですが…
時に疑問に思うことがある。
毎日1曲作る、100曲作る…
これが果たして、プロには本当に必要なのか。
これをすると、本当にプロになれるのか。
結論から言うと
非論理的で精神論ばかり蔓延るブラック企業と同じとしか言えません。
1日1曲作る
自分はいかにも音楽制作やってるんだぞ、というメッセージが伺えますが、この目的はなんだろうか。それ以前に…1曲作るとは、何をもって1曲作ったとみなされるのか。そこが曖昧である以上、ただ漠然と1日1曲作るというメッセージは、有効であることを肯定できません。
どこをもって1曲作ると判断するのか?
「1日1曲作るぞ!」
さて、そのゴールはどこ!?
- 1フレーズ作曲する
- ワンハーフ程度のメロディラインを作曲する
- 1曲フルサイズで作曲する
- 1フレーズ作曲・編曲する
- ワンハーフ程度の作曲・編曲をする
- 1曲フルサイズで作曲・編曲する
- ミックスし、プリマスタリングまで行う
- マスタリングまで行い、公開できるレベルまで追い込む
これがかなりバラバラです。後者になればなるほど、所要時間は増えます。
1フレーズであれば10分もあれば十分です。しかし、作編曲まで行くと、その時間は大きく増えます。公開できるレベルまで追い込むのであれば、日課をこなした時点で1日が終わってもおかしくありません。日課作業とすると言うのは、往々にしてそれ以外にやることが他にもあるわけですから、日課作業が本来やるべき作業時間を潰しては本末転倒です。
その目的は何?
どこまでをもって1日1曲制作とするのか…それは目的によると思います。
メロディラインを磨きたいのであれば作曲段階、アレンジを磨きたいのであれば編曲をする必要がありますが、DAWの操作に慣れるのであればDAW上で編曲する、ミックスやマスタリングを鍛えたいのであれば曲作りとは別次元でも問題はないと思います。
おそらく、何かしらの目的をもって「1日1曲作る」と自他に公言しているのではないでしょうか。ポートフォリオとして使える楽曲を用意する、特定ジャンルの表現方法を研究し会得する、ミックスを鍛える…ただ、その目的を達成するために、果たして「1日1曲作る」という公言が正しいのでしょうか。
目的を達成するためには、曲作りをする必要があるとは言い切れません。もちろん最終的には楽曲として反映させることにはなるでしょうけど、必ずしもそのプロセスで曲作りをする必要はないと考えます。オーケストラの音の重ね方をミニチュアスコアを見ながら打ち込んでみる、EDMのリズムやパッド、シンセの使い方にSEの使い方を研究するためにノートに書いてみる、劇伴音楽の研究のために1日中テレビの前に座っている…そういう日があってもいいと思います。
「1日1曲作る」が目的となっている?
これが大きいのではないでしょうか。
プロは毎日楽曲制作をするもの、だから俺もプロになるために1日1曲曲作りを日課とする…ただそれで漠然と1日1曲をやっているのではないか、と思うことがあります。
漠然と1日1曲作るというのであれば、それは生産性に欠ける日課としか言えないと思います。ポートフォリオとなる楽曲を増やしたい、販売する楽曲を作るというのであれば、それは1日1曲作るという目的を立てずとも実行することはできます。曲作りを通して能力アップを目的とするのであれば、何も1日1曲作るということに拘る必要が無いというのは前述したとおりです。
ただ漠然と1日1曲作るというのは、ただ単に「1日1曲作るを継続すればやがてプロになれるだろう」という謎の安心感に背もたれしていたい、という思いがあるのではないでしょうか。
もちろん、絶対的な作業量をこなすので、一概に毎日作曲が無駄というわけではありませんし、その分だけ制作能力は上がっているとは思います。ただ、どう見ても目的を持って目的に沿った勉強をする、それに勝るとは思えません。
100曲作ればプロになる
プロになるという定義が色々とあるというのはさておき、広義的なプロということで考えると、まったくもって説得力がありません。
この理由についても、前述した「1日1曲作る」と同じです。目的もなく100曲作っても全く意味は無いですし、曲を作るだけでプロに必要なものが備わるわけがありません。曲作りは、どれだけ知識技術感性を培ったのか、それをアウトプットするだけに過ぎません。曲作りをしてレベルアップするというのは、曲作りを経てDAWやソフトウェア音源の扱い、ミックスの技術、作曲・編曲技術といったものを実戦形式で培うからであり、「この表現を試してみよう」「こういうミックスはどうかな…」など、向上心がない状態で楽曲制作に臨んでも、経験値は増えません。
個人的には、広義的なプロになるということであれば、100曲程度では無理だと思います。もっとも、広義的なプロになるために必要な要素には、曲作り以外の要素が含まれるため、漠然とその数を重ねても無理だと思います。逆をいえば、100曲作らなくても戦略要素がしっかりしていれば広義的なプロになることは十分可能とも言えますが、そこは別のお話です。
プロになるには10000時間の勉強が必要
以下同文でお願いします。
ちなみに10000時間は、416日と16時間、1日8時間換算で1250日…およそ3年半弱の時間です。
100曲作ればプロになるとかよりも説得力はありますが、ここにもその勉強をどれだけ有意義に集中して臨んだかによって大きく変わると思います。
結局のところ
目的もなく漠然とこなしている、というイメージが強いと思います。
楽曲制作を「食業」としたいというのであれば、仕事をするか、仕事につながる曲作りや勉強をするか、お金を生む作品制作をする必要があるでしょう…仕事をするとは、その代価を得るということですから。プロになるには、仕事をすることが収入になる…それを考えられることが絶対条件だと思います。
金の話を出すと、汚いイメージを抱かれるかもしれませんが、どんな職種であれ、何のために仕事をするのか…それは言うまでもないでしょう。たとえ、仕事にお金以上の目的や主張があったとしても、それ以前に「食業」として確立できなければ維持できません。クリエイター業や芸能職は、それが音楽やイラスト、声に歌に演奏などと言ったエンターテイメントであるだけに過ぎません。(ただ稼ぎたいと言うだけであれば、わざわざクリエイター業を目指す人はいないとは思いますが…)
クリエイターがクリエイターとして生きていくためには…
特に混沌を極める昨今のクリエイター事情だからこそ、一人ひとり改めて考えてほしいと思います。