クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

アンダーマイニングとは

皆さん、おはようございます。

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ようやくまっとうな秋の陽気になってまいりました。

ただ、夏日から急に秋の陽気になったので、衣服の調整が難儀したり、明け方寒かったり(寝ている最中は布団を蹴飛ばすほど暑かったり)と、油断していると作業しやすい時期に風邪をひいてしまいもったいないことになるでしょう。

アンダーマイニング効果とは

クリエイター業をやる上では避けて通れない厄介なものだと思います。

簡単に説明すると…

 

アンダーマイニング効果

任意の動機がある物事に対して別の外的な動機づけを行い励むことで、いつの間にか任意の動機別の外的な動機が入れ替わってしまう現象のこと。これにより、外的な動機がなくなってしまうことで、その物事のモチベーションを失ってしまう。

…これではよくわかりませんね。

ケース1:ボランティアで街の清掃

住んでいる街をきれいにするという目的のため、ボランティアを募って街の清掃をしました。ボランティアで街の清掃活動をしているということで、人が集まりそれなりに大人数になりました。

ある時、その姿に感動した近隣住人が、彼らを労おうと、清掃活動終了後にジュースを各人に振る舞ったり、時には手作りのご馳走をもって振る舞いました。彼らにとって、近隣住人から目に見える形で感謝されることで、そのモチベーションは高まり、日々ボランティアに励むのでありました。

しかし、その町内で、ボランティアに物品を振る舞うことを禁止するという決まりができてしまい、ボランティアで清掃活動をしても、以前のようにジュースなどを振る舞われることもなくなりました。

その結果、ボランティアの人数は日に日に減少し、ついにはボランティア活動を始めた当初を割り込み、やがて自然消滅するに至りました。

 

なぜそうなったのか…

それは、ボランティア活動をするという動機と、ボランティア後に振る舞われる労いという動機が参加者の間でいつしか入れ替わってしまったからです。

これが、アンダーマイニング効果と言われるものです。

ケース2:効果を利用した迷惑行為の沈静化

アンダーマイニング効果におけるエピソードでひざポンだった物をご紹介します。

 

近所の空き地に面する家に、一人の老人が住んでいました。ドラえもんの空き地を想像してもらえると話が早いです。

しかし、近所の空き地は、格好の子供の遊び場、注意しても一時は沈静化するも、しばらくして同じ状況に戻る…そんな繰り返しに頭を悩ませていました。空き地に面している以上、騒音もそうですし、遊具が家に飛び込めば物損を被るかもしれません。

ある時、近所の空き地でボール遊びをする子供に対して、こう言いました。

ボール遊びを見せてくれたら1人に100円ずつやろう

たった100円ですが、小学生や幼稚園のこどもにとっての100円は、駄菓子屋の基本単位です。しかも、ボール遊びをする上に100円もらえるという至れりつくせりです。

老人は子供らにボール遊びをするたびに100円を渡していました

しかしある日、「すまんの、今日は2人で100円ずつじゃ」と、1人あたりの金額が100円を割ってしまいました。そしてある日…

「申し訳ない、お金がなくなってしまったのじゃ…」

老人がそう言うと、子供は激怒しました。

「これまでお金をくれたのにお金がないなんて!いいよ、じゃあもう遊ばない!!」

それ以降、子どもたちが空き地でボール遊びをすることはなくなりました。

老人からすれば、怒鳴り散らすこともなく千数百円程度を擲ったことで、子供のボール遊びをやめさせ、それに伴う物損の危険性もなくなりました。アンダーマイニング効果をうまく逆利用したと言えるでしょう。

クリエイター業におけるアンダーマイニングの危険性

ついやってしまいがちではないでしょうか?

業務内容の範囲外まで請け負ってしまう

制作の仕事を請け負いましたが、完成品に対して細かな修正要望が有りました。

これについて、せっかく仕事を振ってもらったので、修正要望については無料サービスします、と受け答えしました。

しかし、ある一件で、その修正要望にかなりのコストを割く状況が発生しました。それについて「この規模の修正は別途料金を頂戴します」とクライアントに告げたところ、クライアントは「無料で修正に応じてくれたじゃないですか!」と激怒されました。これが行き着く先は、前言を撤回せずに修正要望に応えるか、修正要望の作業量を論拠にクライアントと争うか、最悪案件がキャンセルされ姿を消されるといった、どちらもクリエイターに負担がかかる結末しか見えません。

この例題に対する最適解は、「修正要望はどの範囲までをサービスとするのかを明確化しておく」ことです。

 

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 実績が出るまでは安請負する

これについては、スネがある限り何度でも蹴り続けようと思います。

相場外の値段を提示して仕事を請け負う人がいますが、これについては逆効果です。明らかに一般的な相場を知らないというケースが大多数なんでしょうけど、「プロが親切丁寧に作る」っていう売り文句で仕事を請け負っているケースを見る限り、相場を知ってて態とやっている可能性も十分考えられます。プロ(本業)でやっているのであれば、まず5000円で楽曲制作して生計が立てられるという結論にはたどり着きません。

「無名のうちは報酬を犠牲にしてでも実績を積む」と、相場を大きく逸脱した値段を提示するクリエイターがとにかく多いですが…これで得られる実績は、制作の実績では有りますが、同時に安請負をした実績でもあるのです。つまり、世間に流れる名声は、クリエイターとしての名声ではなく、相場を大きく逸した破格で仕事を請け負ってくれる便利屋さんとしての名声です。

当然ながら、彼のもとには、安請負を目的とするクライアントばかりがやってきますし、実績ができてまっとうな相場を打ち出した瞬間、彼の周りを取り巻いていたクライアントは、蜘蛛の子を散らすように一斉に消えていきます。当然、これ以降仕事が来るはずもありません。それもそのはずです…彼の魅力は、破格で仕事をしてくれる便利屋としての性質でしかなかったからです。

 

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 対策としては

仕事に値段をつける

ひとつの仕事をするにしても、複数の工程が有ります。その工程1つ1つに値段をつけます。値段をつけるというのは、単純に考えて、その工程にどれ位の時間、労力を要するのかを把握することです。

無用にサービスだらけにしない

「無料で相談に応じます」「リテイク無制限」とか、クライアントからするとお得と思われ、クリエイターもこれをきっかけに仕事につながると思うかもしれませんが、単なる便利屋扱いをされて終了にもなりかねません。

「定食ライスおかわり自由」感覚で、サービスとは言え限度があると思うかもしれませんが、想像の斜め上を行くケースが有ることにも気をつけたいものです。

無料と有料の線引をする

リテイクなどは、どれぐらいの範囲までを無料とするのか、それを明文化しておくことも必要になるでしょう。

 

仕事が欲しい故に自らを擲ってしまうことが多いクリエイター事情があるからこそ、改めてアンダーマイニングには気をつけたいところですね。

アンダーマイニングとは文字のごとく、墓穴を掘りかねない現象なのですから。