音楽制作の時にやってること
皆さん、おはようございます。
音楽制作を仕事にしているわけですが、音楽制作に限らず「クリエイティブな仕事については材料費がかからないから無料でいい」という考え方があるようです。しかし、クリエイティブな世界においては、材料は(電気代と作業中のコーヒー代ぐらいしか)かかりませんが、制作に必要な機材の購入・維持・管理・更新といったことにお金がかかりますし、仕事をするために費やす時間がかかることは一緒です。
ただ、クリエイター自体に、クリエイターが仕事に対して金銭を請求する理由について弱いなと思うことがあります。それは、クリエイターが理論的に、制作にお金がかかる理由、お金を請求すべき論拠を説明できていない、だからクライアントもクリエイティブな作業にどうしてお金を払わないといけないのか、それを理解できないというのもあると思います。
ただ、今回はそういう話は抜きに、音楽制作の仕事をする際に、どんなことをやっているのかを、紹介したいと思います。
そういうお話については、後日記事にできたらと思います。
音楽制作の時にやってること
音楽制作の時にやってること、とは言いますが、これは別に「音楽制作の時、どんなことを考え、どういうところを意識し、どういうことに気をつけながら…」という、クリエイター目線でのコラムではなく、単純に音楽制作の仕事がどういうプロセスを持っているのか、それを淡々と説明していくだけです。
まずは企画書を読みます
飲食店に行ったらメニューを注文します。
メニューを注文しないで料理を出すのは、食べ放題か回転寿司ぐらいです。顧客の言うことを利かず勝手に作って勝手に出してなんて、今日び頑固親父の居酒屋でも流行りません。
それと同じで、まずは企画書を読みます。
別途添付された企画書や、メールの文面にある楽曲の用途や傾向の記載を読むなど、作る楽曲の方向性を決めます。
作曲に入ります
メロディラインを考えます。
人によっては、この段階で作業機を立ち上げて制作することもありますが、筆者の場合、おもちゃのキーボードをスタンバイして作曲に入ります。メロディラインの記録はもっぱら紙です。生楽器を得意とすることもあり、キーボードの出音からインスピレーションを受けてメロディを作ることも珍しくありません。
編曲に入ります
メロディラインが決まったら、編曲に入ります。
すぐに作業機を立ち上げるわけでもなく、こういうリズムで、こういう楽器構成で、ギターのリフはこんな感じ、ピアノは…ストリングスは…とおおまかな構成を決めます。
もちろん記録するのは紙です。なんだかんだで紙に書くのが一番手軽です。デジタルでは文字を打ち込むことには適していますが、文字のフォーマットに従わないものや描画には不向きです。
ある程度構成が組み上がったら、いよいよ作業機を立ち上げて作業開始です。
作業機を立ち上げて打ち込みます
作業用iMacを立ち上げ、DAW(音楽制作ソフト)を立ち上げます。
打ち込みとは、「このタイミングで、この音を、これぐらいの長さで鳴らせ」などといった命令を入力することです。音の高さやタイミングを目視で確認しやすくなっているので、マウスで手軽に入力できますが、基本的にはmidiキーボードを使い、リアルタイムで演奏し、演奏したものをデータに変換していきます。演奏データを取り込み、細かいところはマウスやキーボードで微調整するほうが、マウスよりも遥かに早く、かつ人間らしい演奏の味を残して入力することができるのです。
これを、ポップスだったら、ドラム、ベース、ギター、ピアノ、ストリングス
…の各セクションに対して入力していきます。
ミックスして整えます
入力が完了し、細かな修正が終わったら、ミックス作業に入ります。
入力が完了した直後の状態で再生すると、ドラムが大きすぎたり、ピアノが埋もれてしまったり、音が固まってモヤモヤするなど、すごくいびつな曲になります。1つの楽曲として完成させるためには、各パートの音量バランスを取り、ダイナミクス(音量の変化)を調整し、音を聞こえやすく、耳あたりをよくしないといけません。
楽曲を仕上げます
ミックスが完了した段階では、聴きやすくなったものの、市販の音楽CDと比べると聴き劣りします。そこで、楽曲全体の質感を整え、ダイナミクスを調整し、音圧を稼ぎ、楽曲の完成形へと持って行きます。
そして納品へ
楽曲が完成したら、クライアントへと納品します。
音楽CD形式、オーディオデータ、オンラインでの納品など、任意の形でクライアントに作品を渡し、制作は完了となります。
もちろん請求も忘れずに
楽曲制作の支払いについて、振込先の案内、または請求書を送付します。
振込を確認して、案件は終了となります。
楽曲を作る、ということについて、これだけの作業を行っています。
特に、楽曲制作の「仕事」において、事務作業にリソースをとられることは、クライアントでも見落としがちになる要因です。そこを意識できるかどうかも、ただ楽曲制作しているだけなのか、クリエイター業を営んでいるのかの違いになると思いますね。
楽曲制作ひとつとっても、これだけの作業工程が含まれるんだぜ…というメッセージの発信もそうですが、改めて、クリエイター業を営む人に、これらの作業を踏まえた上で自分の仕事に値段をつけてほしい、そう自戒する思いでもあります。
クリエイターを、「食業」に。