X-touch miniを調整してみた
前回のあらすじ
コンプレッサーやイコライザなどのエフェクタのパラメーターを手元のダイヤルなどで調整し、さもハードウェアエフェクタを調整するようにすることで、細かな調整を、なにより気分が盛り上がることが目的で、midiコントローラ「X-touch mini」を購入したのだが…
それをMacにつなぎ、Logicで使えるようにしようとしたところ、様々な問題に直面し、早速暗礁に乗り上げてしまった…
果たして、X-touch miniを使って、快適な楽曲制作環境は手に入るのだろうか。
X-touch miniを調整してみた
時間的余裕がない状態では何もできません。
まずは…
これをピックアップしていきます。
なにせ、A・Bレイヤー合わせても、フェーダー2種、ダイヤル16種、ボタン32種、ダイヤル押下16種の入力しかなく、特に回してステータスを調整できるダイヤルに何を振り分けるかを考えるのは重要です。
それだけでなく、Aレイヤーは音源調整用、Bレイヤーはミックス用とレイヤーごとに用途を分けるため、音源調整用にダイヤルに割り振るコントロール・ミックス用にダイヤルに割り振るコントロール、それぞれ8つづつしか使えません。
個人的には生楽器系を多用するため、生楽器のソフトウェア音源を調整するのに適したコントロール情報を当てていきます。
Aレイヤー:楽曲制作セクション
ダイヤル部
ソフトウェア音源調整セクションには、ソフトウェア音源で頻出するコントロールを設定してあります。但し、モジュレーション、サステイン、ピッチベンドなどのリアルタイム入力要素が強いコントロールについては、キーボード側で操作します。
このソフトウェア音源調整セクションで調整するパラメータについては、もちろんリアルタイムで調整が可能ですが、基本的には音を鳴らしながら調整していく使い方が主となります。
ダイヤル部分のステータスは、最小値0、最大値127の設定。これは、右に回すと最大127まで値が増加し、左に回すと最小0まで値が減少する設定です。
プリセット部
プリセット部分については、DAW側のショートカットを割り当てています。これを押すことで、ソフトウェアシンセのプリセット音を手元で順送り・逆送りすることができるので快適です。
A/B共通操作セクション
A/B共通操作セクションについては、Aレイヤー・Bレイヤーとも同じ操作ができるボタンで、主にトランスポートの役割を果たしています。下段については最初から本体に印字されている機能に従ってDAWのショートカットを当てはめています。
フェーダー
フェーダー部分はCC11、エクスプレッションです。キーボードやフットペダルでも調整できますが、細かな調整をするには、単位距離あたりの変動が少ないX-touchの60mmフェーダーの方が、大胆に動かしても微細な変動に抑えられるので、表現に適しています。
レイヤーB:ミキシング用レイヤー
ダイヤル部
主に編集作業に使います。編集作業でよく使うショートカットを設定しています。
微細なノートの位置調整、オートメーションの値調整を行うようにし、細かい調整をマウスを使わずに手元のダイヤルで数値調整するようにしています。マウスは滑りやすいし、時々ポインタが明後日の方向にぶっ飛びます。一番右のダイヤルは、トラックのPanを調整できるようにしています。
Panを除くダイヤル部分は、Relationという設定。これは、右にどれだけ回しても値65を送り続け、左にどれだけ回しても値63を送り続けます。ダイヤルにショートカットを付与する上では欠かせません。これについてはおまけで取り扱います。
プリセット部
プリセット部分については、レイヤーAと同じです。プラグインエフェクターの場合、エフェクタごとのプリセットを呼び出す際に便利です。
A/B共通操作セクション
Aレイヤー同様、主にトランスポートの役割を果たしていますが、ミックスのときはその使用頻度も高まるでしょう。
フェーダー
フェーダー部分はCC7、ボリュームです。
ボリュームはトラックの音量調整に使います。モータライズはされていないので、リアルタイム入力をする際は再生時点でのフェーダー位置を基準としてオートメーションを記録していくことになります。しかし、60mmのフェーダー長があり、フェーダーの変化で徐々に音量が変化していくのがわかりやすく、その後でダイヤルに設定したオートメーションのブレークポイントの上下を併用すれば、効率よく細かなミックスができるでしょう。
…というわけで、X-touch miniを楽曲制作に使えるようカスタマイズしてみました。
特に、ソフトウェア音源の音質調整、ミックス作業におけるコスト削減、効率化が図れた気がします。しかし、なにか物足りない…
結局、ハードウェアエフェクターを弄るような感覚の追求は?
ミキシング用レイヤーBで気になるところ…
それは、ダイヤル1とその下にある2つのボタンを含んだ「使用しません」の領域…
本来はここで、ハードウェアエフェクターを操作するようにパラメーターを調整するはずでした。
前回の記事で、エフェクタのパラメーター1つ1つにダイヤルを設定していっても、同じダイヤルに設定したパラメーターが、エフェクタの枠を超えて同時に変動してしまうためです。仮にダイヤルが十分な数あっても、1トラックに同じエフェクタを2つ以上挿せば、同じエフェクタの同じパラメーターが変動してしまいます。
…なので、全部のダイヤルに個別のパラメータを設定するのではなく、パラメーターをボタンで選択し、その都度ダイヤル1を回して調整する方法を検討しました。
しかし、Logicのショートカットには、プラグインのパラメーターを選択する、次のパラメーターを選択するというショートカットが存在しません。
つまり…
プラグインエフェクターのパラメーターを選択して、その都度ダイヤルで調整するという、ハードウェアエフェクター的な操作は、残念ながら叶わないことになります。これは、どれだけ多くのダイヤルを積んでいても同じです。
これについては、別の方法を模索してはいきますが、ひとまずは楽曲制作用で落ち着いた、という結論を出させていただきます。
しかし、これでマウスやキーボードの使用頻度を大きく減らすことができるので、制作コストが大幅に削減されるでしょう。ちなみに、midiコントローラーに設定されているmidiコントロール情報と、コントローラーに設定したショートカットが競合した場合、midiコントローラーに設定したショートカットの挙動が優先されます。頻出するmidiコントロールにショートカットをセットしてしまわないようご注意下さい。
また、現在はLogicだけですが、ミックス・マスタリング専用に使っているProToolsに用いるのであれば、もっと自由度高く使うことができるでしょう。
そこについては、詳しく調べる必要がありますが、ミックスが楽しくなれば、楽曲の仕上がりを追求することも楽しくなるでしょう。
…楽しみです!
おまけ。
なぜ、ダイヤルをRelation設定にしないといけないのか
ショートカットをmidiコントローラに割り振る場合、「そのmidiコントローラの/チャンネル番号/コントロールナンバー(またはノート番号)/数値」を認識します。
通常では、ダイヤルを右に回すと+1づつ、左に回すと-1づつコントロールの数値が変動しますが、これは+1/-1の相対値変化を送信しているのではなく、現在のコントロールの数字に±1した絶対値を送信する仕組みとなっています…このまま説明しても難しいですね。
凡例
midiチャンネル16、現在のCC41の値=64のときに、midiチャンネル16、CC41を送信するダイヤルAを右に回し、それを「ノートを1拍後にナッジする」のショートカットに設定した場合
理想としては、ダイヤルAを右に回せばノートが1拍後ろにナッジされる挙動なのですが、これを普通のダイヤル設定で行うと、「midiチャンネル16、CC41の値=65になった時だけノートが1拍後ろにナッジされる」ことになります。
なぜなら、ショートカットに設定する時、ダイヤルAを右に回すことで、DAW側は「そのmidiコントローラの/midiチャンネル16/CC41の値=65」という情報を受け取り、この情報とショートカットの挙動を結びつけるからです。つまり、ダイヤルAを回してもCC41の値が65にならなければ、「ノートを1拍後ろにナッジする」ショートカットは動作しません。逆に、CC41の値が65を越えている時、ダイヤルAを左に回すと、CC41の値が65になれば「ノートを1拍後ろにナッジする」動作をします。これでは使い物になりません。
そこで、Relation設定にすることで、ダイヤルAを右に回せば常に値65を送信するようになり、「CCの値=65になった時にノートを1拍後ろにナッジする」の条件を満たし、ショートカットが機能するようになるわけです。逆に、ダイヤルAを左に回せば常に値63を送信するので、右に回したときの機能とは逆の機能を設定してやれば、ダイヤルを使って順送り・逆送りを設定できるようになるわけです。
おわかりいただけただろうか。