クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

【改訂版】仕事に値段をつける「陥りやすい価格設定」

皆さん、おはようございます。

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ブログ立ち上げに近い時期にこんな記事を書きました。

 

nrts-creator.hateblo.jp

この記事の中で、「作業時間の時給を決めて、制作に必要な時間を掛けた金額を額面とする」と書きました。

しかし…

陥りやすい価格設定の罠

作業時間あたりの時給×作業時間で額面を決める時、陥りやすいものがあります。

 

それは、「作業時間あたりの時給をどう決めるのか」ということです。

おそらく、身近な額面を時給の参考として用いている人が多いのかもしれません。そこに、陥りやすい落とし穴がありました。それは…

アルバイト時給≠作業時間の時給

陥りやすい価格設定の罠、それは、自分の作業時間の時給をアルバイトの時給と同じぐらいに設定してしまうことです。

時給が1000円以上になれば、地方ならいい相場であり、通常時1200円以上ともなれば良案件です。100時間も働けば単純計算で月10万円以上…ですが、なぜそれはいけないのでしょうか。

アルバイト時給は経営者が設定する価格

時給1000円という設定は、経営者がアルバイトに対して設定するものです。働く側からすれば、自分の仕事に時給1000円が支払われることになります。

ですが、経営者側からすれば、そのアルバイトに1時間あたり1000円を支払う場合、果たして1時間あたりいくらの働きをしてもらわなければいけないのでしょうか。

当たり前ですが、時給1000円の人に、1時間1000円ポッキリの仕事を求めるわけがありません

経営者はそのアルバイトの人に、売上という目に見える業績もさることながら、顧客への信頼や店舗の運営、教育、現場のマネージメントなど、企業としての体を維持する事を求めます。

それだけではありません。企業としての体を維持するには、材料費や労働対価だけでなく、利益という形で貯蓄し、今後の事業拡大に対する投資や、不測の事態に踏ん張るだけのヘッドルーム(余裕)を持たせておく必要があります。

もし、アルバイトに時給1000円で支払い、本当に額面相応の仕事しかしなかった場合、貯蓄はできず、ふとしたトラブルに対応できず、企業は潰れてしまうでしょう。時給1000円の人には、その3~4倍程度の時給換算の仕事をさせないと、企業としては割に合わないでしょう。

 

…ところで、もしかして思いっきり脇道に逸れていると思っていませんか?

これは至って予定通りの経路です。

クリエイターは労働者であり経営者である

フリーのクリエイターは創作の仕事をするのはもちろん、事務作業をこなし、広報し、収支計算をして確定申告まで行う…規模は小さくともやっていることは事業者そのもの…それは過去の記事でも書いてあります。

 

nrts-creator.hateblo.jp

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 もちろん、単純計算でアルバイト程度の時給×制作時間で算出されると、制作の相場が大幅に崩れ、ダンピング(公正健全な競争を阻害するほどの不当価格で安請負する行為)が発生するという懸念もありますが、それ以上に、その報酬はクリエイターとしての創作のみならず、クリエイターとしての体を維持するためのヘッドルームを持つ必要もあります。

  • 事務や広報など、制作以外のクリエイター業務についての対価
  • 前触れもなく、いきなり機材が壊れるかもしれない。
  • 商談が突然破談するなど、案件がキャンセルされ報酬が途絶するかもしれない。
  • 仕事が来ない期間がやってくるかもしれない。
  • 病気や怪我など、作業を進められないクリティカルな事態に陥るかもしれない。
  • 税金を納めなければならない。
  • 何より、仕事で食べていくこと、養っていくことを考えなければいけない。

そういう事態に対処できるよう、自分の仕事をアルバイトのような労働者視点でのみならず、経営者視点として考える必要があります。

なぜなら、クリエイターは経営者ですから。

そして、クリエイター業は個人事業者であり、やっていることは規模は違えど1企業と同じですから。

 

クリエイター界隈で問題になっている、不当な買い叩き問題。

これには、仕事を振るクライアント側の様々な理由もありますが、仕事欲しさにクリエイター側がダンピングすることにも原因があります。

もしクリエイターに、自信を持ってクリエイターとして生きることを考える人が増えれば、安請負するケースも減り、安請負に毅然と立ち向かうことができるようになる…実績をちらつかせて仕事を買い叩く手法が通じなくなり、ダンピングを防ぐことができるでしょう。

クリエイターは、普通の人にはできない、クリエイターしかできないことができるからクリエイターと呼ばれるものだと思います。無用な謙遜は必要ありません。

胸を張って自分はクリエイターであると豪語すれば、クリエイターがクリエイターとして喜びとやりがいのある仕事ができ、そのから生まれる成果物が、クライアントにも満足をもたらす、双方Win-Winの関係を築き上げることができるでしょう。

まとめ

  • クリエイターはクリエイター業の「経営者」である
  • アルバイト時給設定は経営者の額面設定ではない
  • 直接の創作活動のみならず、事業運営を考えないといけない
  • クリエイター業を考えることが買い叩き問題を解決する手段となる