クリエイターを、「食業」に。

サウンドクリエイターとしてフリーで活動する楽曲制作者、NR-Takaの、クリエイター問題に対してあれこれ考え、書き連ねるブログです

「仕事させていただきました」って言い方、やめませんか?

皆さん、おはようございます。

 

 

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クリエイターや人気イラストレーター、アーティスト、歌手など…自分たちの活動をツイッターなどで報告する事例が増えました。一昔前までは、ブログや公式ページといった、一方通行での情報発信の時代でしたが、今日、あの有名ゲームに関わっているクリエイター、あの歌を歌っている歌手が、リアルタイムで情報を発信し、それをタイムラインで取得することができるようになりました。

ただ、気になることはあるのです。

仕事させていただきました、という言い方

 こういう感じのツイートってよく見かけると思いますが、その中にある「~の仕事を担当させていただきました」については、いかがなものかと思うことはあります。

 ~させていただきました、と用いる理由

  • 「~しました」という謙譲語
  • 同業者から自分を選んでくれたことに対する感謝の表れ
  • 単にみんなこういう言葉遣いをしているから

おそらく要因として多いのは、この3つだと思います。

謙譲語として使う場合

「~します」という謙譲語には、2種類あります。

  • ~致します
  • ~させていただきます

この2つ、どちらも相手に対して自ら謙って行動することには変わりませんが、似ているようで全く違います。

致します

薄い本でいうところの…ではありません。大人しくあと1ヶ月ちょい待ってください。

いわゆる、「~します」を謙った表現のことです。

 例:3日以内にお届けいたします

させていただきます

致しますに比べて、以下の要因が絡む場合に用います。

  • 「相手に対して許可を求める」
  • 「力関係の高い相手に対して謙る」

例えば…

  1. この仕事はぜひ私にやらせてください
  2. 先日ご一緒させていただきました~です
  3. お一人様2点までのご購入とさせていただきます

1の場合は、上司に対して部下が名乗りを上げるシーンでよく耳にします。自分が上司に対して直談判し、仕事をしたいです、お願いしますというニュアンスを含みます。

2の場合、取引先の相手と会談し、後日電話での遣り取りをするシーンが想定できます。これは、取引先に対して謙っている事が伺えますね。

3の場合、スーパーの特売品で見かける文言ですね。これは、普段の値段よりも大幅に安く、それを目当てで来客が増えるので、特売品が無くなってしまうと来客に影響が及んでしまいます。なので、購入点数を制限することで、買占めによる不測の事態をできるだけ避けようという意志があります。客にとっては、もっと買いたいという気持ちもあるでしょうけど、何卒ご理解くださいと、許可を求めるニュアンスで使われます。

いずれにせよ、謙る相手が想定できます。

させていただきますを使えないケース

 例:申し訳ございません、まじめに仕事させていただきます。

上司からすればどう思うでしょうか。

まじめに仕事をするのは職場にいる以上は当たり前、許可を求める必要が無いので、この言い方では逆に上司の機嫌を逆撫ですることにもつながりかねません。では「まじめに仕事いたします」なら問題ないかというと、それもおかしな話です。仕事をするのは個人完結の問題であり、謙る対象がいないからです。

「まじめに仕事します」という丁寧語で問題ありません。

 例:作品○○の△△ちゃんのイラストを描かせていただきました(-イラスト-)

謙るべき対象がいればいいのですが、ツイッター上で流れてくる場合、明らかに版権元じゃない方に向かって発信していませんか?それに、謙る相手に許可を求める以前に、勝手に描いちゃいました(テヘペロ)という事後報告じゃないですか。

…とはいえ、版権元に許可を求めれば、エレン先生の二の舞いになるでしょう。

同人は楽しく適度に。

同業者と比べ自分を選んだことに対する感謝の表れ

おそらくはこういう使い方をするケースが多いのではないでしょうか。特にクリエイター界隈、声優、歌手など、華々しくも競争率の高い、仕事に対して供給が圧倒的過多に陥っている業種において顕著であると見られます。

確かに、「~させていただく」という言葉遣いを、感謝の表れで使って問題ない局面はあります。

 例:貴社の~プロジェクトのイラスト制作を担当させていただきました~です

この場合は、仕事を振ってくれた会社を力関係の高い相手と見据え、謙虚になる現れということなので問題はありません。ただ、問題なのは、同じような論調を、ツイッターなど不特定多数を主語とした場面で用いることにあります。その言葉を使って、果たして一体、誰に謙っているのでしょうか。もしも、担当した会社に対して謙っているのであれば、それはSNS上で公言する必要はあるのでしょうか。

自分を卑下しているようにも聴こえる

「~を担当させていただきました」「受賞させていただきました」という言葉には、「こんな若輩者をわざわざ選んでいただき、大変恐縮です」というニュアンスも感じられます。もしも、「~させていただきました」という言葉を不特定多数に発信した場合、それを見た人はどう思うでしょうか。

明らかに、クライアント>>クリエイターの構図ができてしまうと思います。自分を卑下し、クリエイターとクライアントの力関係を公に晒すことが、クリエイター不利の現状を更に助長することにもなりかねませんし、もし彼の公言した仕事を本当にやりたかったという同業者が目にすれば、自分はこんな無用に謙る自信のない人間に負けたのかと、怒りを買う結果にもなりましょう。そうなれば、同業者同士が手を取り合ってクリエイター問題を解決する、クリエイターの地位向上を目指すなど、夢のまた夢です。

単に自分の周りがこういう言葉遣いをしているから

 筆者も大学時代、卒論発表の時に引っかかることがありました。

 『(研究)について、私、~が発表させていただきます

そもそも、卒論発表という恒例行事において、研究生が研究発表するイベントについて、発表させていただくという、許可を求めること自体がおかしくないでしょうか。

ただ残念ながら、卒業がかかっている以上、無用な冒険ができず、それに従ってしまったのは過去の話…それを考えると、「させていただきます」論調が横行している背景には、業界ルールなどのパワーゲームが関わっているからとも思いました。

実際に訊いてみた

そこについては、PCゲーム業界の人に「業界ルールはあるんですか?」と思い切って尋ねてみましたが、得られた回答は「特に言葉遣いに関する決まりはない、そもそも業界ルールなんて存在自体がない(要約)」ということでした。

 

筆者の例にある通り、「~させていただきました」に前へ倣えするのは、業界の先達の言葉遣いに前へ倣えしているという、そういう可能性がありそうです。

させていただきます症候群の蔓延

今回、「~いたします」「~させていただきます」を記事にするにあたり、やはり「させていただきます」を多用することに懸念の声を上げる記事はいっぱいありました。

 

要約すると、「させていただきます」という言葉が持つ便利さ、これがいわゆる「バイト言葉」のように蔓延しているということです。ぱっと聴いた感じ、丁寧さを感じるなと思うことでも、なんか喉の奥で引っかかる違和感…自分では処世術とばかりに「~させていただきます」と多用していても、知らず知らずの間に、相手に引っかかる何かを与えているのかもしれません。

結論

ただ単に謙譲語と丁寧語の使い分けができてないんじゃないのかな。

と、問題のツイートを眺めてて思うのでありました。

とはいえ、プロとして食べている以上、この結論で終わらせるわけには参りません。

プロは仕事ができて当たり前

今は「つまらないものですが」と言われ渡された土産は、つまらないから捨てられる時代です。…というのは流石に大げさですが、その仕事で食っている人が自ら、「自分の仕事は未熟である」と言ってしまうのは、魚屋さんが「うちの店で扱ってる魚は古い!」と言ってしまうようなものです。例え未熟ではない実力を持っていても、いたずらに未熟者だといえば未熟者に映り、未熟であるところに付け込まれれば、買い叩きをするクライアントの思う壺です。

プロは仕事で食っている以上、仕事ができて当たり前です。

例え自分の仕事が、同業者と比べてクオリティが劣っていても、自分はプロの一員である事実は変わらず、その仕事には誇りを持たなくてはなりません。

だから、もっと自信を持って、アピールすればいいと思います。

割れ窓効果同様、割れ窓効果は悪循環を産む。

無用に謙り、卑下すれば、不利な力関係を作られ、買い叩きが横行します。

nrts-creator.hateblo.jp

逆に、自分の仕事に自信と誇りを持って振る舞えば、自ずとクライアントも、その仕事を買いたい、と思い、フェアトレードにつながっていくことでしょう。

何度もいいますが、1クリエイターはクリエイターである以上、クリエイター全体の鑑です。振る舞いの一つ一つが、クリエイターの地位を高めることもあれば、貶めることもあります。

この2つのうち、どちらのツイートのほうが、見栄えがいいでしょうか。
 どちらのほうが、作品を面白そうだと感じるでしょうか。

どちらのツイートに、仕事を頼みたいと思うでしょうか。

 

「 仕事させていただきました」 って言い方は止めて

「仕事しました!」って言い方、してみませんか?