クリエイターが買い叩かれる理由
皆さん、おはようございます。
このブログでは、散々クリエイターの買い叩きを問題としてあげてきました。
その理由としては、安請け合いの横行とそれに飛びつくクリエイター、実績欲しさに自身を安売りするクリエイター、制作の相場を知らず仕事をしていれば有名になって仕事がコンスタントに入るようになると楽観視するクリエイターなど、クライアントとクリエイター絡みの問題が多いわけですが…
ただ、それでもなお、クリエイター側に起因する問題があると思います。
特に、クリエイター側が買い叩きの憂き目に遭うことについて、買い叩きの隙を与えることが多いのではないでしょうか…
今回はそれについて、あれこれ考えていこうと思います。
買い叩かれるには、理由がある
なぜクリエイターが買い叩かれるのかの理由をピックアップしてみました。
- クライアント優位の構図
- クリエイター過剰によるデフレーション
- クリエイターの知識不足
- クリエイターの気質の問題
大きく分けてこの4つですが、今回の記事では項目1~3のおさらいをしつつ、項目4番についてを採り上げていきたいと思います。
1.クライアント優位の構図
過去の記事でもいろいろと紹介しているとおりですが、 仕事を振るのがクライアント、仕事を請けるのがクリエイターという立場ですが、クリエイターからすれば、仕事を振ってもらって仕事をして、代価や仕事による実績を手に入れます。クリエイターからすれば、クライアントは神様ですの心境です。
しかし、クライアントが実績を御旗に、クリエイターを買い叩く事案は今日少なくありません。これがクリエイターに仕事を振った経験が浅い人ならともかく、クリエイターとの渉外に長けた企業のケースも有り、明らかにクライアント優位の構図を利用して買い叩いてるとしか言えません。
2.クリエイター過剰によるデフレーション
項目1にリンクしますが、仕事1に対してクリエイター数十の割合とも感じられるほどのクリエイター過剰供給の状態はあります。仕事の絶対数が少ないのも確かですが、仕事1件に対する報酬額が低いため、複数の案件ブッキングを要したり、アマチュアが仕事に乗り出し、クリエイターの絶対数を増やすなどの様々な問題が絡んできます。
そうなると、仕事の案件が出た際に、なんとしても仕事を手に入れようと暴走するケースが有ります。その代表例として、報酬額を自ら下げて安売りする事が挙げられます。
そういうケースが増えれば、クライアントは「クリエイターは仕事欲しさに漬け込めば買い叩ける」という認識を与え、クリエイター界隈をより一層無駄に厳しい状況に貶めてしまうことでしょう。クリエイター自らのデフレーションは、クライアントの買い叩き増長の温床にもつながります。
3.クリエイターの知識不足
クリエイターが自分の作業に対して適切な値段をつけられない、クリエイター自らが自分の仕事に関する世間の相場を知らないなど、クリエイター業という自営業に対する意識の低さに付け込まれるケースも見受けられます。
また、真っ当な値段を提示して「高い!」と言われても、なぜその値段を提示したのかの理由を語るだけの理論武装がなければ、コンバージョンに至らないか、大きく妥協することになるでしょう。特に著作権問題については、クライアントが提示する「著作権の一切を放棄または譲渡していただきます」に論理的に反論できる人は少ないように思えます。
簡単に言うと、著作権の一切の放棄及び譲渡は不可能です。著作物を使用するための著作財産権の譲渡は可能です。おそらくそれを言いたいのでしょう。絵・音楽・動画など…どんな契約を締結したにせよ著作物を作った時点で著作権(著作者人格権)は制作者に帰属し、万が一の事態が起こった際は、著作者として著作物の使用を差し止める(同一性保持権)ことができます。
4.クリエイターの気質の問題
こういう喩えをするのもどうかと思いますが、いじめの標的になりやすい人には、性格が弱気である、身体が弱いなどの要因があるように見えます。体つきがよく腕力がある、手を出すと反撃されると思われる人は、いじめの標的になりにくいでしょう。
無論、いじめに遭いやすい要因があることは、いじめをしていいという理由にはなりません。いじめという名のもとに行われる、金銭の巻き上げ、謂れ無き誹謗中傷、一人ないし取り囲んでの暴力、自殺しろと脅し追い込むこれらの行為は、いじめとは言いません。恐喝罪・強要罪・名誉毀損・暴行罪・傷害罪・自殺教唆といった、れっきとした犯罪です。
…少し脱線しましたが、もちろんクリエイターを買い叩く行為は断固許されることではありませんが、クリエイター側にも買い叩かれる隙を作っている状況があるのであれば、それは直ちに是正しなければなりません。
クリエイターは貧困というイメージ
イメージというか、格差が激しいというか、いずれにせよピラミッド形とは程遠い分布ですね。よく人数の多さをX軸、収入をY軸でピラミッドを作ると綺麗なピラミッド形になるように表現されますが、実際は砂漠のど真ん中にそびえ立つ塔のように、クリエイター専業で食べていける人は極めて少ないと思います。なので、クリエイターを兼業としている人は決して珍しくなく、「アルバイトを副業しています」と言いながらも、実際はアルバイトの稼ぎのほうが主となっているケースもあるくらいです。
ただ、あまりにも貧困というイメージを出しすぎるのは、マイナス効果を生むことが予想されます。単純に「副業やってます」「生活が辛い」「貧しい」という言葉が聴こえてくるのであれば、本業がうまくいってない人とみなされ、仕事についても本業がうまくいってない理由があるのでは…と勘ぐられてしまいます。特にツイッターなどで外部発信できる今日、ビジネス的な使い方を狙うのであれば、貧困というイメージを出す発言は避けるべきでしょう。
遊んでいるように思われる
クリエイターのツイートを見ると、自分はクリエイター業やってます的なプロフィールを書いてあるケースは少なくありません。また、「今日はギターでこの曲を弾いています」「イラスト…アニメOOのXXちゃんを描いてみました」といったようにアピールすることは多いですが、あまりにも仕事に関するツイートが見られなければ、遊んでいるようにしか思われない印象を受けることはあります。特に、平日昼間に仕事の傍らでツイッターができるクリエイター業であれば、昼間から遊んでいる…というイメージを受けることも少なくありません。
特に「好きなことを仕事にしているんだから、安くてもいいだろ」と買い叩かれることが懸念材料の今日、ツイッターなどのSNSを業務用のプロモーションに使う場合は注意が必要かもしれません。
ビジネスマンとしての気質に欠ける
特にこれは重要だと思います。
近年、プロと同じ制作機材が手の届く値段で手に入るようになり、手に入る情報もその閾値は下がり、誰でも知識技術機材を積めばプロとして仕事を請け負う体制を作ることはできるようになりました。
しかし、クリエイター業は自営業…八百屋さんなどの個人商店とも同じで、都心の高層ビルにオフィスを設ける企業とも同じ、1事業者です。つまり、クリエイター業を宣言することは、クリエイターとしての仕事をもって、事業を行うことです。ですが、同人上がりや、ニコ動などでのオンライン活動から、クリエイター業に手を出す人も少なく無いですが、事業を行うという意識が少ないことが問題と言えましょう。
事業を行うとは、事業を運営するということです。事業に必要な経費と、従業員…つまり自分自身の給料…つまり生活費を事業活動で賄わなければなりません。その意識が欠けていれば、たちまち廃業に追い込まれますし、業界の相場を逸脱したトンデモ激安相場で同業者に迷惑をかけたり、実績欲しさに無償請負をする・無償請負に応えるなど、クリエイター界隈に対してのマイナスをもたらすことになります。制作に必要な要因を揃えただけでは、事業は展開できません。
誰もがクリエイターとしてプロを目指せる時代になり、プロとアマの垣根が無くなったとは言われますが、今一度、その垣根をしっかり作ることが求められると思います。垣根が取り払われた現状が続けば、プロもアマチュアも、誰も幸せになりません。
買い叩かれることに毅然とNo!を
クリエイター業は、どんな仕事をしているのかが見えない、制作に材料を消費することがないなど、どれぐらいお金がかかるのかをクライアントが想像できないのも、買い叩きないし買い叩きに匹敵する低報酬を提示される要因ともなります。
そのために、買い叩きの案件には協力しない、なぜこれだけの制作料金が必要となるのかを論的に説明できるなど、クリエイターに自衛が求められます。業界が打撃を受けるような規制の盛り込みに業界団体が挙って反対の意志を表明するように、クリエイターはクリエイター業界隈を守るために、一所懸命の意識を高めなければなりません。逆をいえば、クリエイター業界隈を守れない人は、クリエイターとして活動すべきではないとも言えます。
それを考えると、クリエイター業の確立…クリエイターの地位を向上させるためには、クリエイター同士が連携して諸問題に立ち向かう必要があるといえますが…ただ残念ながら、現状ではクリエイターが集ってクリエイターの今後についてを話しあうようなイベントや、クリエイターを保護するような組織団体はありません。
それに、クリエイターの中には、クリエイターを自称しているけど、活動スタンスはアーティスト的な人も少なくありません。アーティスト的な立ち回りをするクリエイターの場合、ビジネスライクでの展開を是とするクリエイター気質とは反りが合わないことも懸念されるでしょう。
クリエイターが買い叩かれる理由には、他にも色々なことがあります。
今後もクリエイターが買い叩かれる要因はこれじゃないのか、というものをピックアップしていき、その対策を考え、公表していこうと思います。
仕事をし、その代価をいただく…そこに例外はありません。